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【映画レビュー】パラサイトの衝撃。ソン・ガンホの存在感がすごい(ネタバレあり)

本年アカデミー賞、作品賞受賞その発表当日にパラサイトー半地下の家族ーを見てきた。

 

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韓国映画と言えば、ラブロマンスやアクション系を思い浮かべる方も多いと思うがこの作品は完全に社会派サスペンス。

 

鬼才ポン・ジュノ監督とは

ポンジュノ監督作品は、『殺人の追憶』という今回主演のソンガンホとのタッグの映画を見たことがあり、この作品は実際の事件を元に作られたパラサイトよりもより社会的な作品である。(実際の事件は、華城連続殺人事件

 

この事件は、1986年から約5年間実際に韓国京畿道で起きた10人にも及ぶ連続強姦殺人という凄惨な事件である。容疑者、捜査対象は述べ20000人に及ぶも迷宮入りしたという韓国民にとってはとてもセンセーショナルな事件であった。

迷宮入りしたこの事件をポン・ジュノ監督が作品としてを取り上げて社会派としての印象を持たせた問題作だったのではと思う。長らく真犯人を特定するに至らなかった韓国警察であったがDNA鑑定の最新技術を用い2019年9月に容疑者を特定することに成功したと発表。しかし実はすべての事件の時効が2006年に成立しており、訴追することは不可能だった。粘り強く時効後も捜査を続けた警察だったが、韓国民は警察の能力の低さが凄惨な事件の犯人を罪に問えなかったという声があり史実もまた問題のある経過といえる。ポン・ジュノ監督がこの殺人の追憶をいう映画を公開したのは、2003年であり時効前である。すべてがノンフィクションと言う訳ではないが、ソン・ガンホの圧倒的な存在感で映画そのものが事件のドキュメンタリーかのような印象を受けることができる。この事件を題材に選ぶあたりの感覚もすごいし、今回のパラサイトへの布石がまさか13年前の映画にあるとは監督もソン・ガンホも思わなかったであろう。

 パラサイトの世界観

今回のパラサイトは殺人の追憶に比べると、フィクションでありながらも見やすい万人受けする映画とも言える気がした。舞台はおそらく現代の韓国ソウル。韓国の抱える貧富の差の事情や、一時期韓国で大問題になった台湾カステラ倒産問題が織り込まれている。

 

ソンガンホも"台湾カステラビジネス"に失敗して、貧困になったと息子に語り例の豪邸の地下に住む家政婦の旦那も同じく台湾カステラの倒産により苦渋をなめたと語っている。

 

この辺の事情は、韓国人でなければ馴染みがないように思うがあくまでも、なぜ貧困になったかと言うエビデンスをポンジュノはさり気なく、ストーリーに織り込んでいる。

 

ストーリーは半地下に住む、ソン・ガンホ一家の日常から始まる。しかし、不思議なことに悲壮感は漂っていない。露出を暗めにして薄暗くは演出しているものの、一家は仲良く暮らしているように見えた。

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ひょんなことから息子である長男がビリオネアの家庭教師として潜入するわけだが、騙すほうが悪いのか騙される社長夫人がおめでたいのか、監督の演出なのかもしれないが彼らがそこまで悪いことをしているような描写は見受けられない。プロに徹して求められることをこなせば経歴を詐称できる時代において何ら問題はないのではないか?というアンチテーゼにも感じた。個人的には、

 

仕事を完璧にこなせる能力の高いプロフェッショナル集団

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という印象でよくよく考えたが、やっぱり悪いことをしている訳ではないと思ってしまった。ソン・ガンホが一家の長であり父親であるが離職し貧困にあえいでいても一家から尊敬されている様がいつもいつも印象的だった。

 

途中、家族が富豪宅で勝手に宴会を開くシーンがありそこで本能は社長一家にバレるのだと思った。ここから、一気に物語は加速しもう一つのパサライト(寄生虫)が登場。地下室に向かうシーンは、見ていてもドキドキしたし一番心拍数が上がったと思う。

 

一体そこに何があるのか

 

 こんなにも、期待を裏切るそして予想の斜め上どころがまさに地下の展開w

。そして一家がピンチに陥る、雨の帰り道のシーンで長男と妹が不安になる中、父である彼の包容力と存在感が家族を守る、絶対に生き抜くという強さを感じられる良いシーンだった。このなんとも言えない背徳感と焦燥感が大好きなシーンである。

兄妹役の二人も、たまたまだったとポンジュノ監督は語っているが本当に兄妹みたいに似ている。

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妹役のパク・ソダムの演技力も凄かった。家族の中で一番大胆でメンタルが強い印象を上手に演じていたと思う。半地下に雨水が入ったシーンでタバコをくゆらすシーンの表情は圧巻だった。諦めにも似た怒りに震えるようにも見えるなんとも言えない表情だった。

 

ポン・ジュノ監督のカメラワークが非常に印象的だったのはクライマックス、ソン・ガンホが逃走するシーン。真上から頭上から、逃げる彼と階段を撮ったのである。凄惨な事件現場から逃走する演出としては少し奇怪にも感じたし見ている観客に客観視させたい意図も感じる不思議なカメラワークだった。

 

衝撃のラスト

事件のその後も丁寧に描かれ、伏線の回収というか最後の最後まで観客の想像の裏側を行こうとするポン・ジュノ監督。しかし、メッセージ性はあまり強くなくストーリーを追う中で見た人それぞれが自由に感じてくれればそれで良いみたいなテイストのラストだったし映画だった。例えるなら、ミシュランで星を獲得するようなレストランを初めて訪れたとき難解すぎて素直に美味しいと思えないような皿に遭遇することがある。何かシェフや造り手の

 

この味がわからないほうが、センス無いんですよ

 

という、マウントを取ってくる料理のような映画ではなく一皿、一皿派手な味ではないがコース全体を素直に楽しめる、そんなカジュアルフレンチの様な社会派の入り口を案内してくれる

 

胃もたれしすぎないいい映画

 

だった。映画祭などでみせるキャストの表情は映画のそれとは違い、とても穏やかでいいチームだったんだと取るべくして獲得したオスカー受賞だったのではないかと考える。

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パラサイト制作スタッフ、キャストの皆さんアカデミー賞受賞おめでとうございます。また、韓国のカルチャーが好きになりました。本当に素晴らしい作品、これをオスカーに選んだセンスにも脱帽です。