今回で4回目を迎えたSTARS展。6人のアーティストを迎えて六本木の森美術館で開催されております。まだまだ開催中ですので気になる方はぜひ。全3回のレビューもよろしくおねがいいたします。
宮島達男
作品では時間という普遍的な概念を扱いつつも仏教的思想やテクノロジーという要素を融合させ、国際的評価を得ている。近年では北京UCCA、上海民生美術館などでも個展が開催されている。一方で、1996年には、長崎で被爆した柿の木を源とする苗木を世界各地に植樹する「時の蘇生・柿の木プロジェクト」を始動し、2017年からは、東日本大震災犠牲者の鎮魂と震災の記憶の継承を願い、「時の海―東北」を継続的に制作するなど、社会的な参加型プロジェクトにも力を入れている。ーSTARS展HPよりー
時の海ー東北というLEDデジタルカウンターを用いた作品が大規模に展示されていました。沢山の人が池や海を覗き込むような感じの作りになっており実際に被災した自分にとっても複雑な気持ちになりました。
ここから見えるLEDが人の魂や輪廻転生や「命」を表現しています。遠くから見ると光の点滅にしか見えませんが近づくと一つひとつがデジタルカウンターになっており数字が1~9の間で変化します。
幻想的でもありますが、被災地を実際に見て歩いた自分としては手放しに素晴らしい!とは言えず複雑な気持ちになったのが正直な感想です。
なぜならこの光は無くなった沢山の方の命を表現していると書いてあり、3000個ほどのLEDがあるそう。しかも防水加工が施してあり実際に水を張ることも出来「海」を表現していると。数字のカウントのスピードはそれぞれ違っており、命の短さや儚さを表現したいという思いがあると記載がありましたが実際に津波の痕跡を見た人間からするとあまりにも美化しファンタジー化されすぎていてアート作品としては良いのかもしれないですが現場はそんな綺麗事じゃなかったんだけどなと複雑な気持ちになりました。
ただ、震災遺構として人々の心に忘れられないオブジェとして沢山の人の目に触れることは良いことだと思いますし被災者として忘れて欲しくないので宮島達男のコンセプトには共鳴できるところもあります。
宮島達男の作品は他にも展示されておりこうしたデジタルカウンターがむき出しのものが多かったです。これはこの数字こそが時代や時間の具現化を表現していて普段目に見えない「時間」を意識させてくれるスチームパンク的な作品です。
こちらの作品もかなり長い数字の羅列で実際は縦に高く伸びています。不規則に流れる数字を見つめているとなにか時間や価値というものを改めて考えさせれる気分になります。
宮島達男は「数字」「LED」「デジタル」を操る現代アートの表現者で、なにかを「考えさせる作品」が多かったように感じます。みなさまも流れ行く数字を見て何を感じるでしょうか?
杉本博司
杉本博司の作品は撮影不可だった物が多くので紹介できませんが印象的な動物の作品も多くぜひ足を運んでみていただけたらとおもいます。
以上4回に渡ってお送りしてきた、STARS展いかがでしたでしょうか?個人的には前回紹介した奈良美智の作品群が心に残りました。ですがどの作品や展示もとても大型で素晴らしいものばかりで期間内にもう一度見てもいいかなと思うぐらいでした。Webで見るのと一次情報で実際に作品に対峙するのとでは受ける印象がかなり変わります。ぜひ現代アートの旗手たちの熱量に触れてみて下さい。