みなさん映画見ていますか?トモGPです。11月5日に劇場公開とNETFLIXでの全世界同時配信となった話題作「ボクたちはみんな大人になれなかった」まだ公開されて間もない今作、実は製作が発表された時から気になっていた作品でした。今回何かと話題の今作をようやく視聴することが出来ましたので、ストーリーのネタバレなどは極力無いよう感想を伝えていきたいと思います。(作品に対する知識を極力入れたくないという方は映画をご覧になってからお読みください!)
ボクたちはみんな大人になれなかった
主演:森山未來、伊藤沙莉 監督:森義仁
2020年、社会と折り合いをつけながら日々漫然と生きている46歳の主人公。ふと見たSNSで発見したのは昔唯一自分が自分以上に好きになった恋人だった。そんな彼女に認められたくて、ただがむしゃらだった日々が当時を彩る景色とともに鮮やかに蘇る。(公式HPより)
「ボクたちはみんな大人になれなかった」燃え殻(著)
もともとはWEB小説が原作のこの作品、著者である”燃え殻”の半自伝的な内容で”とにかくエモい”と当時から話題でした。もう一つのキーワードが”90年代カルチャー”、自分が著者である燃え殻と同世代で、音楽や映画の趣味も似ていたことからこの作品に興味を持ち、小説自体は以前に読ませていただきツイートなんかもたまに拝見させて貰っていました。ですので今回の映画化は製作が発表された時から非常に楽しみにしていました。果たして映像化をするにあたり原作の持つ”エモい雰囲気”であったり”90年代カルチャー”がいったいどこまで掘り下げられているのでしょうか。
主人公「ボク」こと佐藤誠を演じるのは森山未來、オリンピック開会式でのパフォーマンスも記憶に新しい今や日本を代表する表現者です。
こちらももはや実力派女優として名高い伊藤紗里、作中では主人公「ボク」が唯一自分のことよりも好きになった昔の恋人加藤かおりを演じます。
この作品のフックとなるテーマが90年代〜2000年代前半のカルチャー、作品のプロモーションでもよく見かけるキーワードです。こんなキラキラしたクラブ全盛期が今は懐かしく思いますw。
小沢健二、電気グルーヴ、タワーレコード、裏原系ファッション、中嶋らも、仲屋むげん堂、など当時の東京を中心としたカルチャーが作中数多く出てきます。
裏原全盛期!アンダーカバーのTシャツが懐かしいです!
作中で小沢健二の曲が使用されるのはファンとしては非常に嬉しいのですが、逆に小沢健二率が非常に高過ぎてて驚きました。ストーリー上仕方が無い部分なのでしょうが、もっと満遍なく当時の他のアーティスト達の曲を使用しても良かったのではないかと思います。
90年代を知るには物足りない?
過去の会話シーンで当時を表すキーワードがちょこちょこ挟まれるのですがそれが非常に不自然、さらにファッションもただ”当時の古着を着させられているだけ”といった借り物感が酷く何だかちぐはぐです。とにかく”この時代はこうだった”といちいち説明させられているようで逆にストーリーを邪魔をしているように感じてしまいました。軸となる90年代に物語が遡るのも映画中盤になってからと大分遅め。
自分のようにこの物語の主人公と同世代の人であれば共感する部分もありますが、逆に当時をわかっていればいるほど粗が目立つように感じるのではないでしょうか。それでも小沢健二が流れれば条件反射で鳥肌は立ってしまいますし懐かしい気持ちにもなります、現代と過去で画面のサイズがシネスコからブラウン管の比率に変わる仕掛けも非常に面白い、ただそれだけに勿体無い!と思う部分がより強調されてしまう作品でした。
結論から言ってしまうとこの作品は90年代カルチャーの入門書としては非常にパンチが弱いです。正直この作品に”90年代カルチャーに対する愛”は感じることは出来ませんでした。もちろんもともとの原作自体は素晴らしく”90年代カルチャー”といった要素も、あくまで物語の付加的なものに過ぎません(少なくとも自分はそう感じています)。しかし映画化をするにあたって”90年代カルチャー”といった部分をフィーチャーするのであればもっとしっかりと作り込むべきだと個人的には強く思います。その部分を作品に落とし込むことが出来ず上辺だけをなぞった形になったことで、先ほども触れたような”会話の不自然さ”だったり”ファッションの借り物感”が生まれてしまったのだと思います。
映画としての素晴らしさ
と、ここまで多少厳しいことばかり書いてきましたが、作品自体はしっかりと楽しむことが出来ました。特に俳優陣の芝居は本当に素晴らしく20代〜40代を驚くほど見事に演じ分ける森山未來や、伊藤沙莉の感情の揺れ動く演技はまさに圧巻、そして東出昌大のチャラ男っぷりはとにかく一見の価値ありです!初めはどうなることかと思って見始めた作品でしたが、陰湿な雰囲気の現代から過去に遡るにつれ作品の雰囲気が明るくなっていく構成は見ていて非常に気持ちの良いものでした。ただストーリーも必然的に少しずつ遡っていくので、そこは演出とはいえ多少感情移入しづらい部分ではありましたが。
原作ありきの作品の映像化が難しいことは重々承知していますし原作と映画は別物ということもわかっています。しかし自分のように原作が大好きだったり作品に対する期待値が上がってしまった人にとっては多少の肩透かしを食らうかもしれません。ただ全編を通して見てみれば映画としてしっかりエンターテイメントしていますし、最後まで楽しむことが出来る素晴らしい作品だったと思います。90年代に全く馴染みが無い人がこの作品を見て当時のカルチャーを理解することは難しいと思いますがこの作品をきっかけに少しでも興味を持ち、何かひっかかるようなキーワードがあれば調べてみるのも面白いかもしれません。