こんにちは。ロードムービーが意外と嫌いじゃないさじゃんです。皆さん、ウィル・スミスに今年の話題をさらわれてしまった今年のアカデミー賞ですが五十年ぶりの快挙なったドライブ・マイ・カーの受賞。まだ、見れてなかったのですがアマゾンプライムビデオで有料レンタルしてみた感想を今日はお届け出来たらと思います。
ノマドランドにも通ずるロードムービー
主人公の家福は俳優であり、妻の脚本家の音と仲良く暮らして居ましたが、娘の死をきっかけに大きく変わった夫婦関係をどこかで押し殺して生きている中年男性です。前半部分はやや違和感のある夫婦生活をただただ見せられます。いかにも東京のクリエイティブな夫婦としてのイメージが描かれてるものの、中年の性生活というあまり描写されない事に大きくスポットが当てられていることに衝撃を受けました。しかし、樋口監督の色使いや見せ方であまり卑猥に見えないのです。こうした表現方法がもしかしたらオスカー受賞への鍵なったのかもと思ったりもしました。音が急逝したあとの虚脱感に覆われた家福の第二の人生をドキュメンタリー風に綴られます。
ドラマ常に車の中から
舞台は東京から演劇祭が行われる広島へ。演者のトラブル防止の為に関係者に運転をさせないと言う理由から運営から運転手を派遣されます。この人物が家福にとって第二の人生のキーパーソンになります。暗い過去をもつみさきにとっても徐々に縮まる距離の描写は、少しずつ少しずつ人間不信が解消されたり今回のドライブマイカーのテーマである、自我の解放であったり自我の肯定こそが愛することだと説いています。大切なワード、セリフ、掛け合いは全てドライブ中のクラシックカーであるサーブの中で展開されています。クルマ好きからすると、演出だと思いますが家福のクラシックカーであるサーブのエンジン音が。より強調されているように思いました。
様々な生き方をする人達と出会うことで変わる価値観
広島で出会う人間たちは家福に多分な影響を与えます。国籍、言語、年齢を超えて同じ演目に向き合う人たちと一緒に行動するさまを見ていると個人的に映画を通して思っていたのですが、
人間とは社会とは自分が想像できない軸で生きている人達がいる
ということです。自分が普段生きているコミュニティーであるとか会社であるとか集団がいかに狭いものなのかということを感じます。専属ドライバーとなった”みさき”から語られる壮絶な過去もまた、家福の悲しい運命とリンクしながら物語はラストへの一気に展開していきます。
まとめ
・約3時間の長丁場もテンポは悪くない
・過剰かもしれない性描写もなぜか卑猥ではない
・村上春樹の本を読んでいるかのような世界観
・基本的には単館系作品
・多言語・手話による多彩な表現もオスカー受賞のエッセンス
誰にでも勧められるかと考えると難しいところもありますが、以前ご紹介したノマドランドにも通じるロードムービーかと思います。
韓国も舞台としては登場するので個人的には多国籍な映画の仕上がりになっており、たしかに日本人向けに作られていないフランス映画のようでもありました。
個人的には、準主役とも言えるサーブ900が非常にかっこよく見えました。今探すと中古車市場にも殆どなくなってしまったので映画の影響もあるかと思いますがクラシックカー好きとしても、
車内の空間は本当に特別なものなのだ
と改めて気付かされる素敵な映画だと思いました。