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沿岸被災地民が映画『すずめの戸締り』鑑賞後に起きた”3つのフラッシュバック”とは【東日本大震災】【ネタバレあり】

天気の子から約3年、新海誠監督最新作”すずめの戸締まり”を11日封切り初日に観覧してきました。今回のレビューは大いにネタバレを含みますので未鑑賞の方は鑑賞後に読んでいただけたら幸いです。

翌日には今回の記事を書き始めていたのですが正直に言うと”東日本大震災のトラウマ”が完全にフラッシュバックしてしまい、多少心身の状態を崩しました。現在は落ち着いて振り返るレベルにはなりましたが実体験(被災地民や東日本大震災で大切な方を亡くした方)を伴った方の鑑賞には十分注意が必要な作品だと思っております。東日本大震災に関しては自身の体験を以前書いておりますので、もし宜しければご覧いただけたら幸いです。

今回はあらすじや考察のレビューではありません。この映画を見た自分がフラッシュバックしたシーンやポイントのお話が中心です。現実に東日本大震災で起きた際沿岸の被災地で起きていた事実と今回新海誠監督が描いたエッセンスがあまりにもリアル過ぎたので、どのあたりにフラッシュバックするポイントがあったのかを書いていこうと思っています。

最初に断っておきますが新海誠監督の大ファンですし今回の作品も基本的には”すごい”素晴らしい”と感じています。しかし、あまりに東日本大震災を想起させるシーンが多すぎたため物語に入り込めなかったのもまた事実で、

実際に被災した人間はこのような感想を抱いたんだ

ということを新海誠さんにもし読んで頂けるような事があれば嬉しいなと思って書いていこうと思っています。否定したりアンチしたいという訳ではなく正直にフラッシュバックしてしまった感情を綴ってみたいと思っています。これから鑑賞される被災地民への注意喚起の意味も込めています。

1.鳴り響く地震警報と大津波警報のサイレン

実際にスマホから流れる緊急地震速報の音とは微妙に変えてありますが、作品のラストで岩手、宮城沿岸に向かうスズメが”常世”と呼ばれる死の世界とも地獄とも呼ばれる世界に入ろうとしたときIMAXの最高音質であの時繰り返し聞かされた”大津波警報のサイレン”。この音は実際に流れていたアナウンスを同じもので相当フラッシュバックしました。なぜ、地震速報に関してはフィクションの音を使ったのに大津波警報に関しては実際のものを使ったのか。意図があるなら知りたいですが正直本当に聞きたくない音だったのでビックリはしました。

2.避難所で母親を探す小さなすずめと周りの大人の反応

鍵を閉める瞬間に”その地に残留していた人の想いが声”となって鍵を締める草太とすずめに聴こえて来ます。実際震災後にはこうした非科学的な無線や電話の混線、様々な霊的現象が各地で聞かれたのですがそうした非科学的な魂の叫びみたいなものを具現化さし表現に盛り込んでいたのでビックリしました。

小さい頃の自分に再会するすずめですが、その時に必死に自分の母親を各避難所で見なかった探しているシーン(声だけ)ですが同じ光景を沿岸の被災地でかなり見聞きした自分としては衝撃でした。新海誠監督が自分と同じ経験をしたかなのようなリアルさだったのです。避難所で肉親を探す方はかなり居ましたし、地元民ではない医療関係者である自分にも質問された事もあったりして本当に大切な人を必死で探している4歳のすずめが当時の被災地の方々と重なりました。

3.季節外れの大雪と打ち上げられた漁船

正直ここまで311の描写をリアルに持ち込んでくるとは思っていませんでした。今でも覚えています、東日本大震災が発生した午後2時46分すぎから急に雪になったのが個人的にも印象的で確かに雪の中、瓦礫のなか小さな女の子が中学生ぐらいの子がダウンを着ながら必死に肉親を”地元があった場所”で姿を見ました。そんな姿が母を探してあるき回るすずめと重なってしまい、正直涙なくしてスクリーンを見ることが出来ませんでした。東日本大震災の震災遺構とも呼ばれている、ビルの屋上に打ち上げられた漁船も何度も登場し震災をモチーフにしたと言うよりも”ストレートに震災孤児であるすずめの物語を描いたもの”だったのだと。個人的には今回の映画はそう言ったドキュメンタリー的部分もあるのだと感じました。

鑑賞を終えた自分に起きた変化

感動で泣いたと言うよりも、12年前のあの東日本大震災の瞬間に降り立った涙でした。完全に意識も心も感情も揺り戻されてしまいました。10年以上経っていろんな気持ちに整理がついていたと自分では認識していました。しかしそれは完全に消化出来ていたわけではなく、

ただ開けにくい引き出しの奥に閉まっていただけ

だということに気が付かされました。動悸が止まらなくなり胃が痛む程の記憶の揺れ戻しが自分の中で起き始めました。無意識の中に存在していた痛みや悲しみを新海誠監督がきれいな風景画と共に復元してくれたお陰で人間とは”時間が経過しても悲しみをゼロにすることは出来ないんだ”と言うことを確認する結果となってしまいました。と同時に立派に育ったすずめや震災で父親を失ったプロ野球選手の佐々木朗希投手のように前を向いて頑張っている人たちが僕たち医療関係者や被災地民の希望でもあり、立ち向かい乗り越えた証でもあるように感じられました。

作品自体のレビューや感想は自分のメンタルの状況が落ち着いたあと、もう一度鑑賞してゆっくり書かせていただけたらと思っています。風化しそうなほど月日がたった東日本大震災をこのような形で作品にしてくださった新海誠監督に敬意を評しますし、実際に体験したわけでもないのに良くも悪くも残酷とも言えるリアル感から逃げずに表現した潔さにただただ畏怖するだけです。東日本大震災から縁遠かった方はまた違った見方ができる映画でもあると思いますし、作品としてはやっぱり好きな映画には変わりはないので未視聴の方は今回の自分の記事を参考にしていただきつつ観覧されることを祈っております。