青山民は上級国民?さじゃんです。都民しかもアラサー世代とアラフォー世代にブチ刺さると評判の麻布競馬場さんのTwitter。自分も好きでフォローしてショート集を読ませていただいております。
港区民、タワマンカーストをあざ笑うかのような描写やセレブコンテンツマガジンである東京カレンダーを”みんながしたいけどみんなが出来ない東京カレ生活”と一刀両断する麻布競馬場さんのファンになりこの度3重版まで伸びているこちらの、
書籍を購入して読んでみましたので書評させて頂ければと思います。都民の誰しもが地方から東京に出てきた人のどこかにトゲのように刺さるタワマン文学を皆さんにもご紹介します。
人に関心がないようで人妬む東京の人々
外部進学として慶應義塾大学に入り現在は覆面で執筆活動を続け現在は会社員だという麻布競馬場さん。自身も日本の西部の地方自治体出身だということで東京と地方の両方向の感覚を持っている方だと読んでいて感じました。自分も東北地方に長く在住し東日本大震災を経験、現在は都内に居ますが麻布競馬場さんのように
地方都市と都内のリアルを常に感じている生活
を送っているのでそのコントラストに非常に共感したのかもしれません。都内の地名の固有名詞や具体的な居酒屋なんかも多数登場しますので東京にほとんど土地勘の無い方が読んだり20代前半のZ世代の方が読むとまた違った印象を持つのだとは思いますが、アラフォー世代で東京カレンダーが大好きな自分が感じた感想をお伝えしていこうと思っています。
「東京」で通用すること
地方の閉塞感から抜け出したくて強烈な輝きを放つ(そう見える)東京に憧れて、進学や就職で上京する日本人は昔から多いと思います。自分も麻布競馬場さんのように地方都市と東京を行き来していますから日本という国の文化的民度や感覚を比較した時に
東京23区とそれ以外の日本
という2つの国で構成されていることに気が付きます。生まれてから死ぬまで基本的な生活領域が地方のまま終わる方にはこの物語や自分が感じているストーリーは全く刺さらないと思います。それほどまでに東京で成功したい、東京で少しでも上のタワマンに住みたい、高級外車に乗りたいと思ってカーストを一段でも多く上がりたいと思う人間が実際に行動するかしないかは別として相当数居るという形になります。
主人公は東京に憧れ東京で挫折する人々
19編からなる短編集である今回の書籍。どれも鬱屈としていてネガティブな表には見えにくい人間の妬み嫉みやっかみを包み隠さず心の声を顕在化させているかのようなそんな労働者文学、タワマン文学と評される文体。個人的にオススメなのが
『3年4組のみんなへ』
『お母さん誕生日おめでとう』
『ウユニ塩湖で人生変わった(笑)』
が好きです。それぞれのストーリーから特徴的なフレーズを取り上げてみます。
ー大型チェーン店と閉塞感のほかに何もない国道沿いのこの街を捨てて東京に出て、早稲田大学の教育学部からメーカーに入って、僻地の工場勤務うつになって、かつて唾を吐きかけたこの街に逃げるように戻ってきた先生の、あまりに惨めな人生の話をしますー3年4組のみんなへ
ー夫には捨てられ、友達らしい友達もなく、娘は東京の大学に行ったきり一度も帰ってこない。台無しになったあなたの惨めな人生は、私を徹底的に縛り、怒鳴り、教育を強制給餌することで戻ってきましたか?ーお母さん誕生日おめでとう
ー私?変わりましたよ。自分のありのままを肯定してあげられるようになったんですよ。他人なんて羨ましくないし、這い上がろうとする人を、必死だなぁ、って笑えるんですよ。彼女の綺麗な服や皮膚に、二度と取れない草と土の匂いがじわじわと染み付いてゆくのを、汚い水たまりの中に立って、眺めているんですよ。ーウユニ塩湖で人生変わった(笑)
非常に辛辣な言葉が並び”人との比較論”人との相対論”でしか幸せを測れない物語が続きます。自分の人生が上手く行かないのを親のせい、他人のせい、友達のせい、地方都市のせいにし
人を貶めることで得られる自己肯定の連続
な物語になっています。すべての皆さんに刺さるとは思いませんが友達でもないクラスメイトの噂だったり、地方から東京の有名大学にいった知り合いの話に酷似していたりしませんか?東京で暮らす誰かの心の暗部を少しだけ開くような麻布競馬場さんのノンフィクションながらもリアリティのある物語。こうして人は東京に憧れ、東京にしがみつき、東京を諦めていきます。港区で豪遊している、高級外車を乗り回している人にも地獄の苦しみがあると言います。
東京=金持ちがカーストの偉い街
と思いこんでいる人々の割合が多いからこそ、学歴、家柄、居住エリア、出身地カーストが生まれるのだと個人的には思っています。
まとめ
・地方から東京に出てきた人にはチクリと刺さるノンフィクション
・史実に基づいて作られているようなリアルさ
・具体的な地名や大学名や大学サークルが登場するので馴染みがない人には難しい
・キラキラしてない逆東京カレンダーの世界観
個人的には引き込まれるように一気に読みました。東京出身ではないので余計に刺さったかもしれません。今後も執筆活動は続くようなので麻布競馬場さんが見る虚像の東京の伝道師としてのポジションを今後も期待しています。