1年間の読書量は100冊ほど、新人ライターSです。近年話題になっている闇バイト。最近では中学生や高校生など未成年の逮捕者が出ており、世間をざわつかせています。そこで今回は川上未映子著の「黄色い家」をご紹介し、私の見解等を述べたいと思います。私は心理学や、犯罪心理等に詳しくはないので、あくまで書評として読んで頂けたらと思います。
川上未映子著「黄色い家」についてざっくりとあらすじをご紹介

黄色い家の舞台は、地下鉄サリン事件や、阪神淡路大震災の90年代。主人公の花が、母の友人、黄美子と桃、蘭と一緒に疑似家族の暮らしの中で、様々な不運が重なり、カード犯罪の出し子に手を染めるというお話です。暮らしていく中で、4人の関係がどのように崩壊していくのか、人はなぜ金に狂い、罪を犯すのかに注目していただきたいです。
個性豊かな登場人物に注目!
「黄色い家」では、それぞれ育った環境や、生き方が異なった人物が登場します。主な登場人物は4人の女性。
花:1980年生まれ。生真面目な性格で貧しいながらも必死に働こうとする。黄美子と一緒にスナックれもんを営業する。
黄美子:1960年生まれ。花の母親の友人。心優しい性格。花と一緒にスナックれもんを営業する。
蘭:花の1歳上。キャバクラ勤務をしていたが、のちに花と一緒にスナックれもんで働く。
桃子:花と同い年。裕福な家庭で育つが、家庭に居場所がなく孤独を抱えている。
他にも韓国人の映水、花にカード犯罪の出し子を教えるヴィヴなどが出てきます。私は作中に出てくる人物全てに“何かがちょっと足りない人たち”という印象を持ちました。
特に黄美子は、境界知能、軽度知的障害、ASD(アスペルガー症候群)のどれかに該当するのではないかと考えます。例えば、掃除全般にたいして、独特のこだわりのようなものがあり、わたしがかかわるのを嫌がるところがあった。この文章からは、ASD(アスペルガー症候群)特有のこだわりの強さを感じられます。他にも「何回おしえても黄美子は右と左を覚えねえから、子どもんときに墨でしるし入れられたんだよ。」や「普通っちゃ普通だけど、表からみるとそうなんだけど、でもなんか、そういう場面あるだろ。話が通じてんのか通じてないのか、わからなくなるとき。この場面で、おまえなんでこれなんだっていうときが」見た目ではわからないが、なかなか理解できない、何回も教えられても覚えられない、これは軽度知的障害の特徴なのかと思いました。もしかして特性があるのではないか?と思うところが作中にちりばめられているので、ぜひ注目して読んでみてください。
個人的に刺さったフレーズ
少し長いですが、個人的に刺さった言葉をご紹介いたします。
ーみんな、どうやって生きているのだろう。
道ですれ違う人、喫茶店で新聞を読んでる人、居酒屋で酒を飲んだり、ラーメンを食べたり、仲間でどこかに出かけて思い出をつくったり、どこかから来てどこかへ行く人たち、普通に笑ったり怒ったり泣いたりしている、つまり今日を生きて 明日もそのつづきを生きることのできる人たちは、どうやって生活しているのだろう。
そういう人たちがまともな仕事についてまともな金を稼いでいることは知っている。
でもわたしがわからなかったのは、その人たちがいったいどうやって、そのまともな世界でまともに生きていく資格のようなものを手にいれたのかということだった。
どうやってそっちの世界の人間になれたのかということだった。
わたしは誰かに教えてほしかった。
不安とプレッシャーと興奮で眠れない夜 がつづいて、思考回路がおかしくなって母親に電話をかけてしまいそうになることもあった。
もしもしお母さん、お母さん、わたし大変なんだよ、どうしていいかわかんないんだよ、夢と現実の境目でわたしは母親に話しかけていた。
ねえお母さん、お母さんはどうやって、どうやっていままで生きてきたの、わたしが子どもの頃、もっと小さかった頃、お金もないのにどうやって、いったいどうやって生きてきたの、みんながどうやって毎日を生きていってるのかがわからない、 わからないんだよ、ねえお母さん、いまどうしてるの、お母さんいままでつらくなかった? こわくなかった?ねえお母さん、生きていくのって難しくない? すごくすごく難しくない?
お金を稼ぐのって、稼ぎつづけないといけないのって、お金がないとご飯も食べられなくて家賃も 払えなくて病院も行けなくて水も飲めないのって、すごくすごく難しくない?ねえお母さん、 わたしわからないんだよ、どうしていいかわかんないの、いますごく難しいの、難しいんだよ、 どうしていいかわかんないの、ねえお母さん聞こえてる?ー
この畳み掛ける文章と心の中の叫びを上手く描いており、共感できるところも多いのではないでしょうか。
今も昔も根本は変わらない
今の若者が闇バイトに手を染める理由は、ブランド物が欲しい、友人と遊びたい、家族を養っていかなきゃならないなど、皆それぞれです。「黄色い家」でもスナックれもんが火事で燃えてしまい、再開しようとするのですが、稼ぐ手段や能力がなくカード犯罪の出し子に手を染めてしまいます。闇バイトに加担する若者と、カード犯罪の出し子に手を染める花。犯罪の仕方は違いますが、今も昔も共通することは、どうしてもお金が必要だということ。そして欲深さや追い詰められた時の焦り、不安などの根本的な心理は、今も昔も変わらないのではないでしょうか。
自分が犯罪に加担しているという自覚がない
カード犯罪の出し子に手を染める花は、犯罪だという認識がなく、一緒に暮らしていた桃子と蘭も気づいていない様子でした。
闇バイトも同様だと考えます。頭ではわかっていてもどうしてもやらざる得ない人もいるのかもしれませんが、“自分が今やっているのが犯罪である”ということに気づいていない人も多くいると私は考えています。SNSやニュースなどで、どんなにメディアで発信しても、「これは闇バイトです。犯罪です。」という情報が伝わらない層があるのだと思います。
まとめ
とりとめのない文章になってしまいましたが、今も昔も「お金を稼ぎたい」という理由で犯罪に手を染めてしまう若者が一定数いるということ。その理由は様々ですが、焦りや欲深さ、不安など様々な気持ちが入り混じって、手を染めてしまうのだと考えます。闇バイトのニュースや「黄色い家」を読んで考えることは、いつの時代も困ったことがあったら誰かに相談できるような関係性を作っていくことが大切なのではないでしょうか。



