クルマは機械じゃない!相棒!さじゃんです。車好きを超えてジャンキーと自称する自分ですが、最近本当に映像を見て涙したお話があり皆さんにも共有したく今日は記事にさせてください。
2024年12月18日、長崎県でひとつの“別れ”がありました。それは、80歳の誕生日を迎えた女性・西本尚子さんが25年間連れ添った愛車「マツダRX-7」と過ごす最後の一日を迎え、運転免許を自主返納したという出来事です。この日、彼女は自らの足で長崎県警浦上警察署へと向かい、長年の運転人生に終止符を打ちました。西本さんとRX-7が紡いできた25年間の物語は今、車好きのみならず多くの人々の心を揺さぶっています。
頭文字Dの衝撃──50代で手にした夢のスポーツカー
西本さんがRX-7に出会ったのは今から25年前、1999年のこと。すでに50代後半だった西本さんはアニメ『頭文字D』に登場するロータリーエンジン搭載のスポーツカー「RX-7」に心を奪われたといいます。当時の愛車はファミリーカー。特にクルマに詳しかったわけでも、メカに強かったわけでもありませんでした。しかし「これに乗りたい」という直感と情熱だけで、RX-7(最終型のFD3S)を購入します。周囲の反応はさまざまでした。
「おばあちゃんがスポーツカー?」
「運転できるの?」
と驚かれることも多かったそうです。しかし彼女は、まるで青春をもう一度取り戻すかのようにハンドルを握り、RX-7と共に走り始めました。
“体の一部のような感覚”──日常に溶け込んだスポーツカー
RX-7はただの移動手段ではありませんでした。西本さんにとって、それは“もうひとつの自分の足”であり、心のパートナーだったのです。買い物や用事、旅行やドライブ。日常のどんな場面でも、彼女の隣にはRX-7がありました。高速道路を走るときには
「道路とクルマと自分の体が一体になる感覚」
が心地よく、年齢を忘れてハンドルを握ったそうです。エンジンオイルの交換なども自ら行い、整備工場ではスタッフと対等にクルマ談義を交わす姿がありました。お孫さんを助手席に乗せて海岸線を走った日も、ひとりで山道を駆け抜けた日も、彼女にとってはかけがえのない思い出です。
“いつかは手放す日が来る”──静かに決意した免許返納
そんなRX-7との生活にも、ついに「別れ」が訪れます。西本さんは78歳のときに、「80歳を迎えたら運転をやめよう」と心に決めたそうです。判断力や反応速度の低下は否応なく年齢とともに訪れます。「何かあってからでは遅い」。その想いから、自主的に免許返納を決断しました。2024年12月18日彼女は長崎市の浦上警察署で免許証を返納し、長年の“ドライバー人生”に幕を下ろします。この時点で、RX-7は走行距離およそ17万キロ。日々のメンテナンスと愛情で、今でも快調そのものでした。
手放すなら、信頼できる人へ──選ばれた譲渡先は“マツダ”
免許返納にあたり、最大の課題は「愛車を誰に託すか」でした。SNSなどで譲渡の意思を発信したところ、全国から約400件以上もの希望者が殺到します。クルマ好きの若者からコレクターまで、さまざまな声が届いたといいます。しかし最終的に彼女が選んだのは、このクルマの生みの親──“マツダ”でした。2025年3月には、広島県にあるマツダの本社で正式な譲渡セレモニーが行われ、西本さんとRX-7は再会を果たします。マツダはこのクルマを広報用車両として再整備し、「ロータリーエンジンの文化と魅力を次世代に伝える」ために活用していくとしています。
“寂しさはない”──次なる挑戦へ、心に灯る情熱
↑↑西本さんとRX-7の最後の3日間を追ったマツダ制作の公式ドキュメンタリーも公開されています。彼女の表情、言葉、そして別れの瞬間。クルマとの関係に新たな視点を与えてくれる貴重な映像です。
RX-7と過ごした25年に別れを告げた今、西本さんは新たな挑戦を始めようとしています。それはYouTubeでの「朗読配信活動」。「江戸川乱歩の小説を読んでみたい」と、文学や声の世界への興味を再燃させているのです。クルマからマイクへ──情熱の方向は変わっても、“何かを表現する”という本質は変わらないのかもしれません。
愛車との物語は、人生を豊かにする
西本尚子さんの物語は、「年齢」や「性別」、「常識」という枠を軽々と超えていきます。
50代後半でスポーツカーに乗り始め、80歳で自らハンドルを手放す。どの瞬間にも、自分の意思で道を選び、クルマと共に“今を楽しむ”姿がありました。人生に寄り添う相棒としてのクルマ。25年間を共に過ごしたRX-7が、これからはマツダのもとで新たな役割を担い、西本さんの想いを背負って走り続ける──。
その姿は、まさに“命を吹き込まれた機械”と呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。
本能ブログでは今後も“人とモノ”の絆を紡ぐ物語をお届けして行ければと思っております。クルマも、カメラも、人生のパートナーとして心を動かしてくれる存在そんな提案をこれからも皆様に出来たらと思っております。