みなさんこんにちは、トモGPです。昨年2024年に公開された映画「夜明けのすべて」、そして2025年今年に入り「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」「リライト」そして超話題作「国宝」など、近年素晴らしい作品が豊富な日本映画界。そんななか先日公開された作品『この夏の星を見る』がまたとんでもなく素晴らしかったので今回は紹介していきたいと思います。
『この夏の星を見る』
原作 : 辻村深月、監督 : 山元環、脚本 : 森野マッシュ、主演 : 桜田ひより
あらすじ
2020年、コロナ禍で青春期を奪われた高校生たち。茨城の亜紗は、失われた夏を取り戻すため、〈スターキャッチコンテスト〉開催を決意する。東京では孤独な中学生・真宙が、同級生の天音に巻き込まれその大会に関わることに。長崎・五島では実家の観光業に苦悩する円華が、新たな出会いを通じて空を見上げる。手作り望遠鏡で星を探す全国の学生たちが、オンライン上で画面越しに繋がり、夜空に交差した彼らの思いは、奇跡の光景をキャッチする――。(公式HPより)
”近くて遠い”がテーマ
『この夏の星を見る』は茨城、東京、埼玉3つの離れた場所にある高校や中学校が舞台で、登場人物も多い青春群像劇です。”スターキャッチコンテスト”というあまり聞き覚えの無い競技が1つのテーマとなっている今作、学生達の一風変わった部活がテーマの青春映画といえば”ウォーターボーイズ”や”ちはやふる”といった作品達をどうしても連想してしまいがちです。しかし『この夏の星を見る』がそれら”珍しい部活青春映画”(ザックリとしたジャンル分けで申し訳ございません)と明らかに一線を画す作品となっている要素、それはこの作品の舞台が2020年のコロナ禍であるということだと思います。ステイホーム、黙食、フェイスガード、コロナ禍で制限された世の中、本作で一貫したテーマとなる"近くて遠い"というキーワードは星との距離だったりコロナ禍での人と人との距離を表しています。コロナ禍の物語ですから、劇中の登場人物達は常にマスクを着用しています。それぞれのマスクに個性は持たせてあるもの、ほぼ全員が常にマスク着用での演技という、出演者側からしたらかなりハードルの高い作品だったと思います。しかしそんなことを忘れさせるくらいに俳優陣の演技は本当に素晴らしく、観客である自分は逆に登場人物達の一瞬の感情の変化や一挙手一投足を見逃すまいとスクリーンに釘付けになってしまいました。下手をしたら作品自体が破綻しかねない演出になってしまいそうですが、そういった意味でも今作は非常に意欲的な作品と言えるのではないでしょうか。
”スターキャッチコンテスト”とは?
同じ規格の手作りの望遠鏡を用いて、お題となる指定された天体を素早くその望遠鏡に導入する(視野中央に入れてピントを合わす)タイムを競う競技、それが"スターキャッチコンテスト"です。お題となる星の等級(明るさ)で獲得ポイントが異なります。スターキャッチコンテストは、なんと作中同様に茨城県にある高校の科学部の顧問の先生の発案により2015年に始まった実在のコンテストなのです。穏やかなイメージのある天体観測が競技になることでこれほどハラハラドキドキするものになるとは思ってもみなく、この映画を観て自分も天体観測の世界に一気に興味か湧いてしまいました。皆で一斉にお題となる星を狙うシーンは天体観測とは思えないまさかの圧巻の迫力とカッコ良さなのです。
なぜ『この夏の星を見る』は映画館で観るべきなのか?
まず真っ暗な映画館のスクリーンで見る星空はまるでプラネタリウムを見ているかの様にとにかく綺麗で、特に望遠鏡を覗くシーンでは実際に自分も一緒になって望遠鏡を覗いている気分になり、ゆっくりと星にピントが合っていく感動はまさに映画館でしか味わえないものでしょう。また天文部の生徒達が主役で天体観測となれば必然的に映画は暗い場面が多くなるわけで、これもいつか配信された時にスマホやタブレットなんかで観ようものならおそらく真っ暗で何がなんだかわからないはず……。またスクリーンに大きく映し出される、溜め息が出るほどの長崎の五島の雄大な風景や茨城の長閑な情景は本当に見逃すことのできない美しさです。
基本的にどの映画もそうなのですが、やはりその作品の魅力を100%味わうのであれば劇場に足を運ぶ必要があると思います。それがこの作品においては特に顕著であると感じました。
最高で、二度と来ないでほしい夏。
"コロナ禍での皆で天体観測"という設定は決して気を衒っているわけではなく、このシチュエーションと題材でなければ描くことができないないテーマがあったからだと思います。今作における”近くて遠い”距離、それは星と星との距離であり、またはコロナ禍における人と人との距離、そしてひいては"根本的に人間同士は近くにいても想っていることなんか簡単には伝わらないのだ"ということを表現している様に自分は感じました。
そんな中で主人公の亜紗は「何一つ成し遂げられなかった」と言いましたが、決してそんなことはなく、本当はその中で過ごした一瞬一瞬がかけがえのない経験であり特別だったはずなのです。天文部顧問の先生の「コロナに奪われた時間と思いたくない」という言葉に生徒を本当に思いやる優しさを感じ、なんだか羨ましくなってしまいました。すべてが尊い作品です。
アラフィフの自分はこれまでこういった高校生達の青春映画を見ても、感動はするものの"あの頃"に戻りたいとは決して思ったことはありませんでした。しかし登場人物達がひたむきに問題と向き合っている姿や人との繋がりなど、これまでの青春映画には無い丁寧な描写を見て、今回初めて自分も学生時代に戻りたいと強く思ってしまうほど、『この夏の星を見る』は自分にブッ刺さった作品でした。おそらく自分と同じ様に思う大人達は多いのではないでしょうか。そしてきっと観る人の世代によって様々な捉え方ができる作品だと思います。しかし真っ暗な映画館の中で登場人物達と一緒に星空を眺める感動は皆一緒なはずです。この夏、みなさんもぜひ一緒に映画館でスターキャッチしてみませんか?


