
2025年9月28日、愛知・IGアリーナで開催された「RIZIN.51」は、ライト級・フェザー級のダブルタイトルマッチやグランプリ決勝戦を含む全18試合がラインナップされたビッグイベントでした。キャッチコピー「天下を喰らえ。」の通り、日本MMA界最高峰の闘いが繰り広げられ、MMAファンとして胸が熱くなる大会でした。今回は大会全体の印象から、注目カードのレビュー、そして活躍した選手たちの評価と将来性まで、格闘技初心者にも分かりやすく熱量たっぷりに振り返ります。
大会全体の印象 – 王者の貫録と進まない世代交代

まず大会全体を俯瞰すると、実力者たちが順当に強さを示した大会でした。メインカードの二大タイトル戦では現王者がいずれも圧巻の内容で防衛に成功し、王者としての格の違いを見せつけました。一方でベテラン対若手の構図では残酷なまでに若手が勝利し、実力世代交代の流れも感じられました。例えば、第1試合ではK-1王者から総合転向した大和哲也がMMAデビュー戦に挑みましたが、シュートボクシング王者・奥山貴大の的確なテイクダウンと腕十字に屈し、1R一本負けを喫しました。打撃の強い大和も寝技で圧倒されてしまい、「MMA適応にはもう少し時間が必要か」と痛感させられる結果でした。ベテランの意地を見たいファンとしては悔しい展開でしたが、それだけ若手勢の総合力が向上している証とも言えます。
全体として試合内容は事前予想を大きく覆す波乱は少なく、下馬評通りの決着が多かった印象です。ライト級・フェザー級の王者は予想通りの圧勝、防衛成功。ヘビー級GP決勝やフライ級GP準決勝も実績ある選手が順当に勝ち上がりました。MMAファンから見ればハイレベルな攻防に唸らされる内容でしたが、派手な番狂わせやスター選手の乱闘劇はなく、一般層へのインパクトという点ではやや地味に映ったかもしれません。実際、メディアでも「MMAファン以外には刺さりにくい興行」と指摘する声もありました。しかし、その分コアな格闘技ファンにとっては技術戦とストーリーを堪能できる内容で、大晦日の次大会に向けて重要な布石が数多く打たれた大会でもありました。
ライト級タイトルマッチ:ホベルト・サトシ・ソウザ vs 堀江圭功

メインイベントとなったライト級タイトルマッチ、王者ホベルト・“サトシ”ソウザと挑戦者堀江圭功の一戦は、期待通りサトシが圧巻の強さを見せました。堀江が序盤に先制の一発を当てるも、サトシはすぐに組み付きバックを奪取。そのまま高速かつ芸術的とも言えるグラウンド捌きで首を極め、開始わずか1分30秒でリアネイキドチョークによる一本勝ち!
サトシは5戦連続1Rフィニッシュという離れ業で史上最多となる5度目の王座防衛を達成し、その強さはもはや芸術の域に達しています。挑戦者の堀江も直前のLANDMARK大会でTKO勝利し勢いに乗っていましたが、グラウンドに引きずり込まれては成す術がありませんでした。
サトシの強さはもはやRIZINの枠を超えるレベルで、「今すぐUFCに行ってもランカーになれるレベル」だとの声がありました。まさにそれほどの圧倒的試合運びで、寝技だけでなく近年は打撃でもKOを奪っている万能ぶりが光ります。堀江としては打撃勝負に持ち込みたかったでしょうが、サトシ相手にそれを実行する前に極められてしまいました。秒殺勝利に観客席からはどよめきと歓声が上がり、サトシの王者としてのオーラを改めて見せつけられる形となりました。
フェザー級タイトルマッチ:ラジャブアリ・シェイドゥラエフ vs ビクター・コレスニック

セミファイナルのフェザー級タイトルマッチも、王者ラジャブアリ・シェイドゥラエフの衝撃的な内容でした。挑戦者ビクター・コレスニックはロシア出身で連勝街道を突っ走っていた強豪ですが、シェイドゥラエフは開始直後から前に出て、いきなりの右ストレートをクリーンヒット!姿勢を崩したコレスニックに対しロープ際で立て続けに左フックを連打し、開始33秒でレフェリーストップという秒殺TKO劇を演じました。1Rわずか33秒でのKO防衛は会場を大いに沸かせ、勝利後マイク前に立つシェイドゥラエフは「誰が俺を倒せるのか?」と思わず畏怖してしまうような凄みを放っていました。
この試合内容には私も鳥肌が立ちました。「ストップ・ザ・シェイドゥラエフは未来(朝倉未来)なのか平本(蓮)なのか?」という声もありましたが、それほどまでに王者の強さが際立っていたと言えます。事実、シェイドゥラエフ本人も試合後のインタビューで朝倉未来の名を挙げ、大晦日に対戦する可能性に言及しています。さらに「階級を上げてライト級王者サトシのベルトを獲りに行ってもいい」という発言まで飛び出し、無双状態の王者は二階級制覇すら視野に入れているようです。ゴング格闘技の報道によれば、シェイドゥラエフは「サトシ選手の試合を見て強そうだったから彼のベルトを獲ろうかな」と語り、朝倉未来、クレベル・コイケ、ヴガール・ケラモフといったフェザー級トップ選手とも「1日で3人まとめて戦う準備ができている」と豪語しています。これには驚きを通り越して笑ってしまうほどですが、それほど彼にとって今回の防衛劇が余裕だったということでしょう。
フェザー級王者の独走状態に対し、挑戦者サイドである朝倉未来も黙ってはいません。朝倉未来は復帰戦勝利後に「フェザー級ベルトは俺のためにつくられた」と豪語し、王座戦線への強い意欲を見せています。大晦日にはシェイドゥラエフ vs 朝倉未来というビッグカード実現の期待も高まっており、これは一般層にも刺さるスター対決になるはずです。シェイドゥラエフの無敵ぶりに誰が待ったをかけるのか、今後の展開から目が離せません。
なお、この試合に関連して「ストップ・ザ・シェイドゥラエフは未来(朝倉未来)なのか平本なのか」とありましたが、平本蓮もまたフェザー級のホープです。しかし後述するように、平本蓮の弟・丈がこの大会で奮闘したものの敗れており、平本兄弟がシェイドゥラエフに挑むにはもう少し段階を踏む必要があるかもしれません。
冨澤大智 vs 平本丈(バンタム級・因縁の一戦)

序盤戦で特に盛り上がったのが、第3試合の冨澤大智 vs 平本丈です。事前の記者会見やSNS上でバチバチに火花を散らしていた因縁カードだけに、試合前から会場の熱気も最高潮。平本丈はあの平本蓮の実弟であり、兄譲りのキレのある打撃に加えて総合経験を積んできた新鋭です。一方の冨澤はBreaking Downで名を上げ現在RIZIN参戦を続けるファイターで、試合前には「打撃で倒す!」と宣言するなど強気の姿勢を崩しませんでした。
試合開始直後、その言葉通りに動いたのは意外にも平本丈でした。序盤、平本は打撃勝負ではなくいきなりタックルから組みにいき、金網際でバックを奪うとチョークを狙います。1Rからスタンドバックの体勢で首に腕を巻きつけ、何度も極まりかける場面を作り出しました。正直この瞬間は「まさか平本が一本勝ちか!?」と場内がざわついたほど。しかし冨澤も気合いでこれを耐え凌ぎ、腕をこじ開けてエスケープに成功します。窮地を脱した冨澤は打撃戦に持ち込み、2R以降は右のジャブとローキックで圧力をかけ続けました。平本もスイッチや前蹴り、左ハイキックで応戦し一進一退の攻防になります。最終ラウンド、平本はテイクダウンを奪ってマウントポジションを取る執念を見せましたが、冨澤もすぐに脱出して打撃で迎え撃ちます。判定は2-1のスプリットで冨澤に軍配!平本の序盤の攻勢を跳ね返し、激闘を制した冨澤が逆転勝利を収めました。
勝利した冨澤はマイクで「思ったよりきつい展開だったけど楽しかった。凄くいい試合だった」と振り返り、最後には「篠塚辰樹、倒さなきゃいけない相手がいる」と、昨年敗れた相手である篠塚辰樹へのリベンジを大晦日へアピールしました。対する平本丈も、惜しくも敗れはしたものの「お互い最後は抱擁を交わすほどの熱戦」で会場を魅了し、兄・蓮譲りのファイター魂を見せました。
「平本はもう少しテイクダウンを狙っても良かった」
「打撃も下手ではないがYA-MANばりに打たれ強い相手には分が悪いかも」
といった指摘もありました。実際、今回も打撃戦で冨澤の右ジャブに苦しむ場面もあっただけに、今後さらに組み技の精度を上げていけば平本丈はもっと強くなるでしょう。敗れてなお今大会ベストバウト級の内容を作り上げた平本丈と冨澤大智、二人の今後から目が離せません。
梅野源治 vs 芦澤竜誠(異色の立ち技対決 in MMA)

第7試合では、“日本ムエタイ界の至宝”梅野源治と“K-1のやんちゃ坊主”芦澤竜誠という立ち技出身同士の異色対決が実現しました。キックボクシング・ムエタイのトップで活躍してきた両者だけに注目度は高く、事前の計量フェイスオフでも睨み合いがヒリヒリするほど。試合は期待通りの激闘となり、3Rフルに戦って梅野源治が判定3-0で完勝**しました。
内容を振り返ると、1R序盤は芦澤が怒涛の左右連打で前に出ましたが、梅野はコーナー際で組み付きテイクダウンに成功。なんと下から三角絞めを仕掛ける場面もあり、梅野がMMAにしっかりアジャストしていることを印象づけました。2Rはお互い激しい打ち合いの中、梅野がカウンターの肘打ち「爆肘」を炸裂させ、さらに引き込んでのギロチン choke も見せるなどグラウンド技術も披露。対する芦澤も意地で踏み付けやサッカーボールキックといったRIZINルール特有の攻撃を繰り出し、顔面が腫れ上がる激しい撃ち合いとなりました。最終3Rまで互いに顔面崩壊の壮絶な展開となりましたが、要所でテイクダウンや極めを狙い総合力で上回った梅野が判定で文句なしの勝利を掴んでいます。
勝利者マイクで梅野は「ヤバいだろ!立ち技の選手がRIZIN MMAで必死に活躍しようと頑張っています。僕はムエタイのテクニックを使って、少しでもムエタイの認知度を上げられるように頑張ります」とコメントし、「芦澤選手、ベビ梅確定!」と冗談交じりに付け加えました(「ベビ梅」とは芦澤選手の愛称への掛け言葉でしょうか)。立ち技出身ファイターが総合で成功する難しさはありますが、梅野はこれでMMA2連勝。ムエタイ仕込みの肘と蹴りに加え、柔術の技も積極的に狙うスタイルで、今後バンタム級戦線に新風を巻き起こしそうです。一方、敗れた芦澤竜誠は昨年末から連敗となりましたが、持ち前の喧嘩ファイトは健在で、スタミナ強化とディフェンス向上が課題でしょう。試合中のラフプレーが目立つのも彼らしさではありますが、最後まで倒れないメンタルはさすがでした。この立ち技出身対決、MMAファンにもキックファンにも見応え十分で、大会屈指の盛り上がりを見せてくれました。
注目選手の評価と将来性

ラジャブアリ・シェイドゥラエフ – フェザー級無双王者の行方
シェイドゥラエフは今回、初防衛戦をわずか33秒で終わらせるという離れ業をやってのけ、その強さはファンのみならず他階級の王者すら意識するものとなりました。「誰が倒せるのか」と言わしめる怪物王者に挑むのは朝倉未来か、同じく無敗のケラモフか、それとも階級を上げてサトシとの夢の王者対決が実現するのか。ゴング格闘技の取材ではシェイドゥラエフ自身が「サトシのベルトを獲ろうかな」と語っており、実現すれば団体の垣根を超えたビッグマッチになります。ただ、「お互いの価値が安っぽくなるので悪手」との声もあります。確かに現状どちらも圧倒的王者なだけに、無理に階級超えの潰し合いをさせる必要はないかもしれません。個人的にも、まずは朝倉未来やクレベル・コイケら同階級トップとの防衛戦を期待したいところです。シェイドゥラエフは「未来、クレベル、ケラモフ、誰とでも一日で戦う準備がある」と豪語していますが、来るべき挑戦者との戦いで彼の人間離れした強さに陰りは見えるのか、今後もフェザー級戦線最大の主役であり続けるでしょう。
ホベルト・サトシ・ソウザ – 世界水準の絶対王者
ライト級王者サトシ・ソウザは、RIZIN最多防衛記録となる5度目の防衛に成功し、その強さは国内MMAファンにとってもはや説明不要です。ユーザー感想では「サトシも今すぐUFCに行ってもランカーになれるレベル」とありましたが、まさにそれを証明するかのように5戦連続1Rフィニッシュという圧倒的なパフォーマンスを続けています。組技主体でありながら近年は打撃も向上し、今回は一本勝ちでしたが堀江戦でも最初の一撃を被弾しても動じずに組みに行くメンタルと反応速度はさすがでした。
今後サトシは誰と戦うべきか。国内ライト級には朝倉未来がフェザー級から名乗りを上げる可能性もあり、あるいはBellator勢やUFC帰りの強豪との対戦も見てみたいところです。実は青木真也が以前から「サトシと年末に戦いたい」とラブコールを送っていましたが、今回サトシが秒殺勝ちしたことで青木との因縁マッチは遠のいたとの報道もあります。とはいえ、RIZINライト級には他にも上迫博仁や武田光司など好選手が控えており、サトシ包囲網が今後形成されていくでしょう。サトシ本人は「UFC挑戦」の野望について明言していませんが、いずれ世界最高峰の舞台に挑む日が来る可能性も十分あります。いずれにせよ、今のサトシに日本国内で敵はいないと言っても過言ではなく、その動向は世界からも注目され始めています。
まとめ – MMAファンに届いた熱気、次は大晦日へ

「RIZIN.51」名古屋大会は、MMAファンの心をガッチリ掴む内容で幕を閉じました。王者たちの貫禄勝ちから若手の台頭、因縁カードの激闘まで、各試合にそれぞれ見どころがあり、解説席の高坂剛氏も「この展開は熱いですね!」と興奮気味に語る場面が何度もありました(ユーザー提供の感想でも「解説の高坂も○○と言っていた」とありましたね)。一方で派手なKOシーンはあっても番狂わせは少なく、格闘技通好みの興行だったことも確かです。メディア報道では「MMAファン以外には刺さらない大衆向けではない興行」との指摘も見られましたが、裏を返せばコアなファンにとって質の高い試合が揃っていた証拠でしょう。
何より、この大会で生まれた結果や因縁が、早くも年末のRIZIN大晦日イベントに向けたストーリーを豊かにしています。フェザー級ではシェイドゥラエフ vs 朝倉未来という夢カード実現の機運が高まり、バンタム級では扇久保 vs 元谷のGP決勝、ライト級では矢地や武田らがサトシに挑むべく名乗りを上げ、大注目のYA-MANや平本蓮も次戦を虎視眈々と狙っています。加えて海外勢との交流も進み、サバテロが佐藤将光に勝って井上直樹への挑戦権をアピールするなど、Bellator勢や他団体の強豪参戦も含め年末年始は夢の対決ラッシュとなりそうです。
大会最後のインタビューで、勝利者たちが口々に「大晦日」「次は年末に」と口にしていたのが非常に印象的でした。それだけRIZIN大晦日への布石がこの名古屋大会で数多く打たれたということでしょう。MMAファンにとって一年最大の楽しみである大晦日興行が、今年はさらに熱く盛り上がる予感がします。今回示された王者の強さと新星の台頭、その全てが次につながっていく――RIZIN.51はまさに次章への序章とも言える大会でした。年末にはどんなドラマが待っているのか、ファンとしてこれ以上ワクワクすることはありません。リング上で叫んだ矢地祐介の「まだまだやれるぞ!」という言は、RIZIN全体にも当てはまるように感じます。まだまだ我々ファンを熱狂させてくれるであろうRIZINの今後に期待しつつ、興奮冷めやらぬRIZIN51名古屋大会の総評といたします。


