
現行型(第4世代)2025年モデルのMINIジョン・クーパー・ワークス(以下JCW、ガソリンエンジン版)を、ディーラーのご厚意で約2時間ほど試乗する機会を得ました。自分の2024年式のBEVクーパーSEも約1年乗り続けて大満足で普段の足やVlogでも登場したように遠出もしています。
試乗コースは市街地から高速道路、そして郊外のワインディングロードまで多岐にわたり、MINIの持つ多面的な走行特性をじっくり体感できました。現在MINIクーパーSE(電気自動車モデル)に日常的に乗っており、今回はその愛車EV版との比較も念頭に置きつつ、ガソリンJCWの実力を確かめてみました。外装・内装も細部までチェックして写真をたくさん撮影しましたので、デザイン面の気づきも交えてレポートします。
エンジンと加速性能:EV(クーパーSE)と比較して

まずはパワートレインから。2025年型のJCWは従来同様2.0L直列4気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力は前型と同じ231馬力程度ですが、最大トルクは先代比+45lb-ftとなる280lb-ft(約38.7kgm)/1500rpmへ大幅強化されています。メーカー公表の
0-100km/h加速タイムは6.1秒
とされ、先代から着実に性能向上を果たしています。実際に街中でアクセルを踏み込んでみると、低回転からトルクフルなエンジンのおかげでグイッと力強く加速し、ほんの少し右足を動かすだけですぐ法定速度域に達してしまう過激さでした。7速DCTの変速も俊敏で、スポーティな“ゴーカートモード”ではシフトチェンジの度に背中を押されるような加速Gが味わえます。
筆者が特に注目したのは、電気自動車版との加速フィールの違いです。0-30km/h付近のいわゆる発進加速に関しては、自分のEV(クーパーSE)と比べてもJCWガソリン車は「同等か、それ以上に速い」と感じる場面は正直少なく、むしろ
EV版の方が鋭いレスポンスで先行する印象すらありました
というのも、EVはアクセルを踏んだ瞬間から最大トルクを発生できるため、低速域の瞬発力ではガソリン車を凌駕し得るのです。事実、海外の試乗比較でも「タイトなジムカーナ的コースなら即応性に勝るEV版JCWがガソリンJCWを打ち負かすだろう」と予想されています。
一方で中速~高速域にかけては話が別で、50~60mph(約80~100km/h)を超えるストレート区間では、軽量かつトルクに勝るガソリンJCWが徐々に引き離すだろうとも言われています。実際公道レベルの加速合戦であればEVの瞬時のパンチ力でJCWにも匹敵する加速感が味わえますが、速度レンジが上がる場面ではエンジン車の底力が光る展開になるでしょう。
なお今回試乗したモデルはあいにくMT(マニュアル)非設定の7速DCT仕様のみでしたが、DCTの出来は良好でパドル操作にも機敏に反応しました。個人的にはMINIはぜひMTも復活させてほしいところですが、現状は電子制御されたブースト機能(10秒間だけ過給圧を高めて一時的に出力を10%上乗せする「ブーストモード」)などデジタルならではの加速演出も用意されています。もっとも、このブーストモード発動時には画面にド派手なカウントダウンアニメーションが流れるなど少々大げさすぎる演出で、正直気が散ってしまいましたが…。いずれにせよ、エンジンのトルク強化と洗練された制御のおかげでガソリンJCWの加速力は健在であり、発進直後の一瞬以外はEVにも負けない痛快なパワーフィールを存分に楽しめました。
ハンドリングと乗り心地:軽快さと安定感

次にハンドリング面の印象です。まず感じたのは、ガソリンJCWの車両重量の軽さによるキビキビした身のこなしです。現行JCWの車重は約1405kgと発表されており、これは新世代EV版(JCWグレードのEVは約1730kg)より実に300kg以上も軽量です。この軽さが効いているのか、ステアリングを切った時のノーズの入り方や方向転換の素直さはまさに「ゴーカート感覚」で、サイズ以上に軽快に感じました。
実際コーナーを次々と切り結んでいくワインディングでは、ハッチバックらしい機敏さと小回り性が光り、車との対話がとても楽しいです。一方、EV版(筆者のクーパーSE)もバッテリー搭載による低重心効果もあってハンドリング自体は非常に安定しており、ワインディングで遅れを取る印象はありません。両者ともFF(前輪駆動)ですが、電動JCW(今回は試乗できませんでしたがラインナップ上存在します)に関しては高トルクゆえに加速時に珍しいほど明確なトルクステア(駆動輪がステアリングを引っ張る現象)が発生するとも伝えられています。
ガソリン版もLSD(機械式デフ)が無くブレーキ制御によるトラクションマネジメントのため、強い加速でコーナーを立ち上がる場面ではステアリングにやや修正を要する引っ張られ感がありましたが、個人的には許容範囲で、むしろパワフルなFF車らしい愛嬌として楽しめるレベルでした。
乗り心地に関してはガソリンJCWとEVモデルでキャラクターが大きく異なりました。ガソリン版JCWは足回りがかなり引き締められており、路面の凹凸に対して常に細かいピッチングや突き上げを伴う硬派な乗り味です。スポーツモデルらしいと言えばそれまでですが、長時間乗ると乗員には少々こたえるかもしれません。それに対し、EV版(クーパーSE)は車重が重いことも影響してか路面への当たりがマイルドで足がよく動き、驚くほどフラットかつしなやかな乗り心地でした。実際ガソリン車からEV車に乗り換えて続けて走ると違いは歴然で、EVの方が出だしからスッとフラットに路面をいなす感覚が際立ちます。高速巡航時もEVの方がどっしり安定しており静粛性も高いため、長距離ドライブではEV版に軍配が上がる印象です。逆に言えばガソリンJCWは軽快さと引き換えに、高速域では路面からのインフォメーションをダイレクトに伝えるスポーツ寄りの乗り味と言えるでしょう。市街地~低速コーナーでは軽快なガソリンJCW、高速クルーズでは安定感抜群のEV版という住み分けが体感できたのは興味深いポイントでした。
エンジンサウンドと演出

走行中のサウンド面にも触れておきます。結論から言うと、新型JCWのエンジンサウンド演出には違和感が残りました。従来までのJCWと言えば「バリバリッ」と小気味よい排気音やアフターファイア音(バックファイアのような音)が醍醐味でしたが、2025年型では欧州の規制強化の影響か驚くほど静かでお行儀の良い印象です。その埋め合わせなのか、車内ではスピーカーから擬似エンジンサウンドやフェイクの排気音を盛大に流しており、これが明らかに人工的な音色で
個人的にはかなり不自然かつ興ざめ
に感じました。録音を通してでは伝えにくいのですが、耳にした瞬間に「作り物の音」だとわかってしまうほどで、正直言って少し寒い演出です。しかも車外に出て確認してみると、ごく普通に静かで控えめなエンジン音しか聞こえないので、そのギャップにも戸惑います。実際BMWグループは新型JCWで「キャビン内で聞こえるサウンドの多くはスピーカーが担っており、外部への排気音量は先代モデルと比べても劇的には変わらない」と述べています。排気経路には3000rpm以上で開く隠しバルブ付のサブマフラーまで仕込んで音量確保に工夫しているそうですが、それでも「外ではせいぜい先代並み、車内ではスピーカー頼み」というのが現状です。背景には厳格化する排ガス・騒音規制があり、自動車メーカーとしても実音をそうとう抑えざるを得ない事情があります。であれば、いっそ割り切ってEV版特有のデジタル走行サウンドを楽しむ方が自然で魅力的ではないか──これが正直な感想です。MINIのEVモデルには加速時に未来的な電子音を奏でる独自のサウンド演出が用意されており(外部歩行者向けの走行音も含めて)、こちらは最初から「モーター音ありき」の世界観なので違和感がありません。筆者としては無理にガソリン車で「スポーツカー音」を偽装するより、EVならではの静粛性や近未来サウンドを受け入れる方が好みだと感じました。
エクステリアとインテリアのデザイン

最後にデザイン面です。今回ガソリンJCWの内外装を細かく観察しつつ、EV版との違いにも注目しました。新型(第4世代)MINIはガソリン車(開発コードF66型)とEV車(同J01型)が併存する珍しいモデルですが、MINIは「パワートレインの違いでデザインに差を感じさせないようにする(= Power of Choice)」と公言しており、一見すると両者は非常に似通ったスタイルに仕上げられています。
しかし細部を見ていくと、プロポーションには意外な差異があります。ガソリンJCWではフロントウインドウ(フロントガラス)が比較的立ち気味に配置されており、ボンネット先端との境目(カウル位置)がドライバーに近い伝統的レイアウトです。
一方、EVモデルではウインドウ位置が前方に大きくせり出して傾斜角が増しており、Aピラー付け根(カウル)がかなり前進しています。そのぶんダッシュボードの奥行きが増し、運転席から見た前方視界はEVの方が開放的でモダンな印象を受けました。逆にガソリン車はダッシュボード先端が手前にある分、クラシックミニを彷彿とさせるタイトでスポーティなコクピット感があります。このフロントガラスの角度と位置の違いがデザイン上の大きなポイントで、EV版(J01)の方は空力効率を大幅に高める狙いからクラシックMINIの0.34というCd値を0.26まで削減するに至ったとのことです。空力重視の結果、EVではリアエンドに向けても絞り込まれたテーパー形状が取り入れられており、真上から見るとガソリン車(F66)がかなり四角いシルエットなのに対し、EV(J01)は後方が絞られているのが分かります。こうした違いから、実測の全長自体はEVの方が若干短いにもかかわらず、ベルトライン(ウエストライン)の高さアップも相まってEVの方がやや大きく見えるという逆転現象も起きています。実物を見比べると「JCWガソリン車が従来型F56の正統進化版」であるのに対し「JCW EVは全く新しいアプローチで再定義されたMINI」という位置づけがはっきり感じられました。
外観デザインのディテールにもいくつか相違があります。フロントマスクを見ると、EV版クーパーSEではグリル開口部がほぼ塞がれたパネル状デザイン(ボディ同色のプレートにパンチングメッシュ風の意匠)になっていますが、ガソリンJCWではエンジン冷却のため大きく口を開けたハニカムメッシュのグリルが与えられており迫力があります。またリア周りでは、ガソリンJCWはセンターマウントの丸形エキゾーストフィニッシャー(テールパイプ)がしっかり主張しています(実は床下にもう一本隠し排気管があります)が、EVモデルでは当然ながらマフラー開口部は一切なくクリーンな印象です。ホイールデザインやバンパーの造形もグレードごとに若干異なりますが、共通して第4世代MINIの新デザイン言語
「カリスマティック・シンプリシティ(Charismatic Simplicity)」
に基づいたシンプルかつモダンなテイストでまとめられています。丸みを帯びたクラムシェルボンネットや大径の円形ディスプレイなど、アイコニックな要素を際立たせつつ無駄を省いたデザインは非常に洗練されており、新旧双方のMINIファンに刺さる仕上がりではないでしょうか。

インテリアについても触れておきます。基本的なデザインレイアウトはガソリン車・EV車で共通しており、ダッシュボード中央には巨大な円形OLEDタッチディスプレイが堂々と配置されています。この丸型ディスプレイは一見するとクラシカルなセンターメーター風ですが、中身は最新の「MINI OS 9」インターフェースで、各種走行モードに応じて画面色やグラフィックが変化する遊び心満点の仕掛けです。
従来ステアリング後方にあったメータークラスターは廃止され、必要な情報はこの中央スクリーンかHUD(ヘッドアップディスプレイ)で確認する方式となりました。物理スイッチ類も最低限(トグルスイッチが数個ある程度)に抑えられており、極めてミニマルで近未来的なコックピットです。質感については賛否あるようですが、少なくともライバルのホットハッチ勢と比べて「プレミアム感が高い」という評価もありました。なお細部で言えば、ガソリンモデル(F66)は従来型をベースに再設計された都合上、センターコンソール周りの設計がEVモデルと少し異なっています。

具体的には、F66(ガソリン)は新型カントリーマン由来の横長カップホルダー配置や大型センターアームレストを備えるのに対し、EV版(J01)はスッキリしたコンソール形状でアームレストも小型化されているとのこと。このあたりは実車を乗り比べないと気付きにくい違いですが、室内写真を見返すと確かにコンソール形状に差異があり、ガソリン車の方が従来志向で実用的、EV車は未来志向で開放的な空間デザインという印象を受けました。
まとめ:JCWガソリンモデルの魅力と今後

以上、現行型MINI JCW(ガソリンモデル)の試乗レビューをお届けしました。総合的に感じたのは、「やはりJCWはJCWたる走りの愉しさが健在」という点です。エンジン車ならではの鋭いレスポンスや軽快なハンドリングは、電動化が進む中でもしっかりと受け継がれており、ステアリングを握る喜びを存分に味わえました。他方、電気自動車版の台頭によって浮き彫りになった課題もあります。低速トルク全開のEVの加速力や静粛でフラットな乗り味、高速巡航時の安定感など、EVならではの美点を体験してしまうと、ガソリンJCWの伝統的な味付けが人によっては「少し荒々しすぎる」「音がうるさく感じる(実際は人工音ですが)」と映る可能性もあります。実際、筆者自身も日常でEVに慣れていることもあってか、新型JCWの硬い乗り心地や人工的なサウンド演出には戸惑いを覚えました。しかし、それらも含めてアナログ的な「ヤンチャ感」「五感に訴えるフィードバック」こそJCWの持ち味とも言えます。電動JCW(約252馬力のEV版JCW)という新境地も登場しつつあるMINIですが、0-100km/h加速6.4秒程度のそのEV版に対し、ガソリンJCWも同等以上のパフォーマンスを示し、キャラクターの異なる選択肢として共存していくことでしょう。
最後に、もしあなたが
「刺激的で遊び心に溢れたホットハッチ」を求めるならガソリンJCW
は期待を裏切りません。多少じゃじゃ馬な挙動も含めてドライビングの腕前でねじ伏せる楽しさがあり、愛嬌たっぷりの走りを見せてくれます。一方で最新のテクノロジーや
快適性を重視するなら、静かで滑らかなEV版MINI
(クーパーSEや今後登場するJCW EV)にも大いに魅力があります。MINIが提唱する「パワートレイン以外は同じMINI」として、最終的なチョイスは好みやライフスタイル次第でしょう。筆者個人としては、街乗り中心であれば瞬発力と洗練性の光るEV、ワインディングを攻めて遊ぶなら荒々しさもいとわないガソリンJCW、と使い分けたいところです。新時代に突入したMINIのホットモデル、皆さんならどちらを選びますか?MINIが両者に込めた魅力をぜひ試乗で確かめてみてください。きっとその奥深さに驚かれるはずです。まずはお近くのMINIディーラーで試乗していただければと思います。
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