
みなさん、怖いものはありますか?
筆者は昔から、宇宙を恐ろしく感じています。
まだ小学校に上がる前のある晩、ぼんやりと夜空を眺めていたときのこと。
煌めく星々を指して、親戚が「今見えている光は、何百万光年も離れた場所から今日やっと届いた光だ」みたいなことをかみ砕いて説明してきました。
さらには「今見ているあの星の光は、今から何百年も前のもので、それが今夜ここから見えているんだよ」とも。
併せてじっくり観察していると、天体が徐々に移動していることにも気が付き、理由を聞くと親戚は「地球がゆっくり動いているからだ」とまで言いはじめ、あまりにも自分の理解を超えた話なので、本当に混乱したものです。
今となってはあたりまえの話でしかないのですが、最初にこれを聞かされた時の衝撃ったらありませんでした。
どうも、本能ライターの松本ミゾレです。
今回は、このうっすら恐ろしく感じている宇宙についてのお話しをしてまいります。
宇宙の恐ろしさの最大要因、それは重力がないこと
前述のとおり、筆者は子供の頃から宇宙に魅力をおぼえつつも恐怖も抱いています。
宇宙空間が真空であること。
そして当然呼吸もできない世界であること。
暗黒がどこまでも広がっていること。
恐ろしく感じる理由は色々ですが、何より今は、無重力。そこをやっぱり恐れてしまいます。
宇宙ステーションに滞在しているクルーが地球に送って来る映像などでも、無重力はお馴染みですよね。
人間は地球にいることで重力圏に囚われ、重力があることを前提とした日々を送ることができています。
モノは、上から下に向かって落ちる。これが地球に住む際の絶対条件です。
だから翼も持たない私たち人類は、決して単独で飛翔することもかないません。
ところが宇宙では、人間も含めたあらゆる物体が、重力の枷を奪われて宙を漂うことになります。
無重力というのは面白いもので、これまで宇宙に上がった動物や人間がもたらしたデータからみて、体にもかなりの負担をかけていることが判明しています。
特に有名なのが、骨への影響。

骨というのは常に重力で一定の負荷をかけられていることで丈夫さをキープしてるのだそうです。
ところが無重力帯ではその不可がどこからもかからないので、骨が徐々に細くなっていきます。負荷が掛からないことで、脆くなるわけですね。
厳密には重力がない状態では、骨の中のカルシウムが尿と共に体外に流出するという話です。また、無重力空間では尿の量も増えるそうですから、排出されるカルシウムも当然多くなるということにも。
これによって骨粗しょう症を発症するリスクが生じ、およそ10か月も滞在すれば、たとえ30代であっても70代後半相当にまで、骨の老化が進むとされています。
2025年3月。国際宇宙ステーション内でのトラブルに見舞われ、およそ9ヶ月も無重力帯での滞在を余儀なくされた宇宙飛行士の男女2名がスペースX社の宇宙船によってやっと地球に帰還したというニュースが報じられました。
地球に帰還した際、この男女は見た目にもかなり老化が加速したように見受けられ、実際にかなり帰還が遅れたことで“10年分の老化が進んだ”と見出しを打つメディアもあったほどです。
無重力空間では人体にも諸々の影響が生じるもので、カルシウムの不足だけでなく筋肉の萎縮や赤血球の減少などのリスクも招いてしまいます。
重力がないだけで、ここまで生き物の生存を脅かすという事実が、筆者にはやはり恐ろしく感じられるところです……。
めちゃくちゃストレスフルな宇宙空間
ちなみに、前述のような健康被害だけでなく、無重力帯では他にもちょっと看過できない支障も生じます。
よく知られているのがムーンフェイスです。
ムーンフェイスとは、無重力空間に人が移動すると生じる現象で、地上では重力に従って下に比重が傾く血液が全身まんべんなく行き届き、循環する際に頭部にも過剰に向けられる現象を指します。
これにより、顔が満月のように丸みを帯びる形になります。
顔が丸くなる程度なら問題も少ないように感じるのですが、実はその影響で鼻づまりや味覚の減少なども生じてしまいます。
これって相当ストレスですよね(笑)。
ずっと風邪を引いてモノの味がよく分からないような状態が続くということですので、これじゃあ日々の食事も満喫できません。
筆者は2年前にコロナになってしまったのですが、その後遺症で今も味覚がちょっと完全に戻ってないというか、ずっと鼻づまりが続くような感覚に悩んでいます。
そのせいで食事が前ほど楽しくないとも感じており、そういった状況に強制的に移行することとなる宇宙空間は、ちょっと本当に金をもらっても行きたくないなぁ……と、どうしても思っちゃいます。
また、生存だけでも苦労が多い宇宙ですが、さらに繁殖に関しても問題が指摘されています。
宇宙では既に多数の生物の繁殖実験が行われています。有名なのがメダカですね。宇宙でもメダカは問題なく累代することが確認されているところです。

一方で陸生動物。特に哺乳類に関しては、宇宙で交尾した場合、受精に至らない可能性が指摘されています。
これって昔からよく夢想されている、宇宙への移住と繁栄という物語にかなり大きな影響を及ぼす脅威です。
人類がどこか別の惑星に移住するために宇宙船で地球を離れたとして、目指すべき天体にたどり着くまでには何代も何代も種を自力で繋ぐ必要が生じます。
それなのにそもそも性交しても受精率が重力下と比較して高くない。もしくはそもそも妊娠できないとなると、人類が宇宙に進出して繁栄するということ自体が、ただの夢物語となるわけで。
ことほど斯様に、無重力空間での人類の生活には、大きなストレスが付きまとうこととなるのです。
宇宙は魅力的だけど…人はやっぱり重力下でしか生きられないのかも
と、ここまで宇宙が人体に及ぼす影響を色々と書き殴ってみたところですが、やっぱりこれだけのデメリットがあるというのは由々しき事態ですよね。
なんと言うか、人間は重力がないとまともに生存できない生き物だということを、改めて認識するというか。
重力があるから人は、高いところから落下すると怪我をしたり命を落としたりもします。
しかしその重力があることで、ベタですが地に足をつけた生活ができるとも言えるわけで、とりわけ健康維持のためにはこの重力がどうしたって欠かせないわけです。
それにしても、いつか地球の資源を食い潰した人類が宇宙に進出して、どこかの惑星をテラフォーミングして移住するという計画が本気で実行に移されることはあるのでしょうか。
計画が実行されたとして、成功するかはそもそも未知数ですが、少なくとも恐らくその頃には今この文章を書いている私も、みなさんも、その子や孫の世代も既に誰からも認知されることがない遠い遠い昔の存在になっていることでしょう。
その頃には無重力帯での悪影響にも、どうにか対策を講じているのかもしれませんね。


