近年の邦画人気の復活をとても嬉しく思っています、どうもトモGPです。ここ数年良質な邦画が増え、改めて邦画の良さというものが見直されています。
2025年おすすめの邦画として前回紹介をさせてもらった作品「この夏の星をみる」、この作品と同じくらい、いやインパクト的にはそれ以上と言っても過言では無い邦画が2025年にはもう1本あります。それが『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』、今回はこの作品を紹介したいと思います。(※ネタバレ少しあり!)
『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』
あらすじ・ジャンル
物語の主人公は大学生の小西徹(萩原利久)。理想とは程遠い冴えないキャンパスライフを送る彼は、ある日授業終わりにお団子ヘアの女子学生・桜田花(河合優実)の凛とした姿に心奪われる。勇気を出して声をかけた小西は、偶然の重なりもあって桜田と急速に打ち解けることとなる。会話の中で桜田が何気なく口にした「毎日楽しいって思いたい。今日の空が一番好きって思いたい」という言葉は、小西が大好きだった亡き祖母の口癖と同じだった。運命的な共通点に驚き喜ぶ小西だったが、二人の前にはやがて運命を変える出来事が訪れることになる。
本作は”思いがけない出会いから始まった最高純度のラブストーリー”というキャッチコピーが示す通り、偶然の出会いと絆を描いた物語です。
本作のジャンルは恋愛映画であり、大学生の青春群像劇的な要素も持つヒューマンドラマです。爽やかな日常の描写と切ない展開が織り交ぜられていて、監督の大九明子自身が「初めて男性主人公の恋」に挑んだ意欲作と語るように、男性視点で描かれる純愛と成長がテーマになっています。作品のポスタービジュアルなんかからも世間一般で言うところの“ザ・青春ラブストーリー”に分類されていると思うのですが、これがとんでもない。『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』はキラキラ青春映画の皮を被った異色の作品、普通のよくある恋愛映画だと思って観ると間違いなく度肝を抜かれます。
監督・キャスト
本作の監督・脚本を務めるのは大九明子、『勝手にふるえてろ』(2017年)や『私をくいとめて』(2020年)など数々の話題作で知られ、これまでは個性的でリアルな女性主人公を描く作品が多いことで定評があります。今回は自身初の男性主人公の恋愛劇ということになります。原作小説の作者はお笑いコンビ”ジャルジャル”の福徳秀介。本作の原作小説で小説家デビューを果たしました。映画は福徳の母校・関西大学でロケが行われており、原作の舞台を忠実に映像化しています。

・萩原利久(主人公・小西徹役) – ドラマ「美しい彼」シリーズなどで人気を集めた若手俳優で、本作では冴えない大学生の主人公を好演しています。本作での演技が評価され、第17回TAMA映画賞にて最優秀新進男優賞も受賞しました。作中の小西が、意図してなのかビジュアル的に原作者であるジャルジャル福徳っぽく見えてしまうのは自分だけでしょうかw。
・河合優実(ヒロイン・桜田花役) – 映画『ナミビアの砂漠』やドラマ「不適切にもほどがある!」への出演で注目され、第48回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞にも輝いた新進気鋭の女優です。本作ではヒロインの桜田花役を演じ、繊細かつ力強い演技で物語を牽引します。
・伊東蒼(さっちゃん役) – 映画『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年)で注目を浴び、その後も話題作への出演が続く若手女優。主人公のバイト仲間で親友の“さっちゃん”こと佐々木咲良を演じ、その切ない恋心を体現した長台詞の告白シーンは「圧巻」の一言です。
見どころ①:よくある恋愛映画だと思うと途中で殴られる
前半だけを見ると、”冴えない男子とミステリアスな女子の、少しこじれた恋愛もの”に見えます。会話も軽やかだし、ちょっと気恥ずかしくなるくらいの青春感もしっかりあります。ところが、物語が進むにつれて空気がどんどん変わっていきます。それぞれの”好き”の矢印が微妙に噛み合わないこと、言わなかったこと、言えなかったことがじわじわと積もっていき、後半にはそれぞれの感情が爆発する長回しのシーンが待っている。これがこの作品の1番の魅力であり観ている皆がぶん殴られるポイントでもあったりするのです。普通の青春恋愛映画だと思って観ているととんでもない目にあいますw。
見どころ②:さっちゃんの長台詞に胸をえぐられる
今作の大きな見どころのひとつが、主人公小西のバイト仲間であるさっちゃんの長台詞のシーン。雨がしとしと降り出した京都の暗い路地で、さっちゃんが小西に向かって、自分の気持ちを一気にぶつける“激白シークエンス”です。尺にすると、約7分超と言われる長い台詞。ほぼワンカットに近いような撮り方で、カメラはほとんどさっちゃんと小西のあいだを行き来するだけ。普通なら編集でバラしてしまいそうな量の言葉を、さっちゃんこと伊東蒼が息を切らしながら、それでも止まれない勢いで吐き出していきます。“好き”を諦めきれない気持ちと、”自分の好きな人は自分を見ていない”というどうしようもない現実がごちゃ混ぜになったような、あまりに生々しい告白。観ている側も「もうやめてあげて…でもまだ聞いていたい…」という矛盾した感情に引きずり込まれること請け合いです。またこのシーンをきっかけに物語は後半に向けて大きく舵を切っていきますので、そういった面でも今作を語る上では外すことのできない大きなポイントとなっているかと思います。
見どころ③:映像と音が映し出す青春の”痛み”
本作は関西大学が全面協力していて、作中にはキャンパスや周辺の商店街の風景がたっぷり登場します。レンガ造りの建物や坂道、図書館の前、銭湯の湯気……画面に映るのはどこにでもありそうな日常なんですが、その「どこにでもある風景」が、映画の前半と後半で、登場人物達の感情の変化と共に同じ場所なのに見え方が変わってくるのもこの作品の面白いところでもあります。
音楽面では、スピッツの「初恋クレイジー」がキーとなる楽曲として使われていて、クライマックスの感情の波と見事にシンクロします。優しいメロディなのに胸がぎゅっと掴まれるような使われ方をしているところは個人的にかなりグッときました。
まとめ
さっちゃんの長台詞にはじまり、突然のズームアップや細かい音量の変化だったりと、”映画ってこんなことしていいの”といった演出も盛りだくさんです。しかし今作はそれだけの気を衒った様な飛び道具的な作品では決してなく、実は全ての要素が明確な意味を持っていて、さらにそれらがラストに向けて一気に収束していく様は正に圧巻の一言。かと思えば恋愛初期にありがちな”これってお互い好きってこと?”的なワクワク描写がとにかく絶妙だったりと、ちゃんと”青春ラブストーリー”しているのもこの作品の大きな魅力だったりします。
色々な意味でとにかく”ヤバい”作品『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』、恋愛映画が好きでも苦手でも1度は触れてみていただきたい1本です。2025年11月現在、劇場でもサブスクでも視聴可能ですのでみなさんもぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。


