温かい蕎麦の美味しい季節がやってまいりました、どうもトモGPです。先日、横浜関内駅前にある有名な老舗の蕎麦屋「利休庵」が、駅前の再開発に伴い閉店を迎える、という横浜市民にとってはなんとも寂しいニュースが舞い込んできました。ということで今回は、我々横浜市民にとって特別な創業70年の歴史を持つ横浜関内の老舗の蕎麦屋「利休庵」についてその歴史や魅力をお届けしたいと思います。
利休庵
利久庵は昭和22年(1947年)戦後の横浜で創業し、現在まで地道に営業を続けてきた老舗蕎麦店です。創業者は横浜の古い地名”久良岐郡(くらきぐん)”にちなみ、自家製の乾麺に「久良岐そば(よこはまそば)」という名を付けるなど、郷土への想いを込めて店を興しました。昭和22年創業当初から”木鉢三年、延し三月、包丁三日”と言われる蕎麦打ちの伝統を重んじ、特に木鉢作業(蕎麦粉を水と練り合わせる工程)に心血を注いできたといいます。その実直な姿勢が地元で長年支持され、「蕎麦屋で一杯」という日本人の粋な食文化を横浜関内で楽しめる店として親しまれてきました。なお同店はお笑いタレント”出川哲郎さん”のご親戚(叔父)が経営する店としても知られており、店に立つ“会長”こと大旦那さんは御年87歳(2025年時点)になってもなお元気に店を見守っています。昭和の趣きを残す建物や調度、そして店主をはじめベテランスタッフの気さくなおもてなしも相まって、古き良き横浜の面影を感じられる貴重な存在なのです。
北海道産そば粉とこだわりの出汁
利久庵が長年支持される理由の一つに、素材への徹底したこだわりがあります。蕎麦には北海道産の上質なそば粉(十勝産を含む)を使用しており、細打ちでありながらコシと風味をしっかり感じられる麺に仕上げています。さらに、蕎麦つゆの出汁には北海道利尻産の昆布と厳選された鰹節(宗田節や土佐節など)を贅沢に使って旨味を抽出し、仕上げに香り高い花鰹を加えることで、すっきりとしつつ奥深い味わいを実現しています。こだわりの素材選びと丁寧な仕込みによって、蕎麦本来の香りとのど越し、そして出汁の旨みが見事に調和した一杯が提供されているのです。
レトロな雰囲気のお店の佇まい
情緒ある和風建築の店舗は関内駅から徒歩約3分という好立地にありながら、喧騒を離れ昭和レトロな雰囲気を漂わせています。
店内は1階がテーブル席中心、2階は座敷の個室風空間となっており、合計約140席と広々としていて接待や家族連れにも対応できます。老若男女幅広い客層が居心地よく過ごせる空間で、常連の年配客から品の良いマダム、サラリーマンまで誰もが足繁く通う温かな雰囲気が魅力です。利休庵は昼休憩はありません、11時〜21時までお店は開いています。横浜スタジアムのすぐ側ということもあり、野球のシーズン中は試合後に訪れるお客さんで溢れかえることもあります。訪れたこの日は昼過ぎの14時前位でしたが、店内は満席状態ということから、昔も今も変わらぬ利休庵の人気が伺えます。
彩豊かな看板メニューの数々
長年愛される利久庵には、一度は味わっておきたい魅力的な看板メニューが揃っています。サクサクの揚げたて天ぷらがたまらない鉄板の「天ざる」が人気なのは当然なのですが、利休庵に来たのならぜひ1度は味わっていただきたいのが"利休そば"です。とにかく具沢山が特徴で、その内容は、海老天、鶏肉、椎茸、玉子焼き、蒲鉾、青菜、ゆで卵、お麩、かぼちゃなど、十種類以上にも及ぶ豊富な具材が彩り良く盛り付けられた豪華なお蕎麦で、食べ応えは十分。冷たい蕎麦でも温かい蕎麦でも提供され、たくさんの具材の味を少しずつ楽しめるため満足感があります(ちなみに並以外に上もあります。)また京都名物として知られる"にしん蕎麦"も利久庵の人気メニューです。甘辛く炊いた身欠きニシンが蕎麦の上に乗った一杯で、ニシンの染みた甘めの出汁が麺に絡み、独特の風味がクセになると評判です。さらに、利久庵ならではの変わり種として「そばいなり」も見逃せません。いなり寿司のご飯の代わりに蕎麦を詰めたユニークな一品で、ほんのり酢のきいた蕎麦と甘いお揚げの調和が絶妙です。持ち帰り用の折詰(そばいなり8個入りやそば寿司の詰め合わせ)も販売されており、お土産に求めるファンも多い逸品です。
名物"利休そば"と"そばいなり"
今回注文したのはもちろん"利休そば"です。こんなに具沢山でも並です。まるで鍋焼きうどんの様な具材の豪華さで、こういったメニューは蕎麦屋ではなかなか珍しいのではないかと思います。卵焼きとゆで卵といった、卵料理が2つも入ってるのも珍しく嬉しいポイントだったりします。
まず初めにお伝えしたいのですが、利休庵は"蕎麦"が本当に美味しいです。利休庵はお店の見た目がレトロ感と言えば聞こえは良いのですが、良くも悪くも普通の街の蕎麦屋っぽく見えるので舐められがちなのですが、蕎麦自体の味はそこら辺の蕎麦屋とは一味も二味も違います。
しかも甘辛い風味が絶妙なお出汁が相まって本当に永遠に食べ続けることができるのですw。
そしてもう1つのおすすめがこの"そばいなり"です。これがまた絶品。おあげと蕎麦の相性なんてもともと良いのだからこのメニューが美味しくないわけがありません。
ぎゅうぎゅうにおあげにに詰められた蕎麦を一口でパクリと食べる体験もユニークですし、冷やし蕎麦なのですが、サクサクというかなんとも言えない不思議な食感も非常に心地良く、訪れると必ず頼んでしまうとにかくおすすめの一品です。
閉店の予定と関内駅前再開発の概要
そんな利久庵ですが、惜しまれつつも2026年3月末で一度その長い歴史に幕を下ろすことが決まっています。背景には、現在進行中の「関内駅前北口地区市街地再開発」計画の存在があります。利久庵がある関内駅北口周辺一帯では、老朽化したビル群を一新し、地上20階超の高層ビルや駅前広場、商業施設付きの新しいビルを建設する大規模開発プロジェクトが進められているのです。この再開発に伴い、利久庵を含む周辺の建物は取り壊されることになり、戦後から続いた老舗の店舗も立ち退きを余儀なくされます。隣接する老舗の天ぷら店"天吉"(ここはなんとサザンオールスターズの原由子さんの実家のお店!)など、同じく昭和から営業してきた飲食店も軒並み閉店や移転を余儀なくされており、地域にとっては一つの時代の区切りとなる出来事となりました。当初、利久庵は2025年末で閉店すると伝えられていましたが、名残を惜しむ常連客の声もあり、現在の店舗での営業は2026年3月31日まで延長されました。77年の歴史に幕を下ろす姿に、多くのファンが寂しさを募らせていますが、一方でこれまでの感謝を伝えようと連日多くの人が足を運んでいます。
しかし、利久庵の暖簾が完全に失われてしまうわけではありません。店側は今後、再開発に伴い現店舗は閉じるものの、近隣に場所を移して営業を再開する予定があるという噂もちらほら聞いたりします。また新たな施設内や元の地での再オープンも期待されていますので、一旦歴史にピリオドは打たれますが、長年培ってきた味とおもてなしをこれからも守り続けていただきたいと切に願いつつ、"またあの味に会える日"を心待ちにしたいと思います。


