イスラエルが50年ぶりに”戦争状態”を宣言した、ハマスによる大規模攻撃。日本にいるとどうしてイスラエルがパレスチナとずっと揉めているのか分からないという方もいるかと思いますし日本のメディアの報じ方も正直上手ではないので、私本能ブログ編集長のさじゃん的にも沢山の書籍、メディア、You Tubeを通じてパレスチナ・イスラエル情勢を勉強しました。しかし、日本は言わばアメリカの同盟国(韓国もですが)ですからどうしてもイスラエル視点寄りアメリカ寄りの報道姿勢を目にすることが多いかと思います。
当時のイラク戦争のようにテロ組織の殲滅やテロ組織を支援する国家の殲滅をお題目にアメリカが世界の警察をやってのけた時代と現代とは様々な様相が違います。ハマスとアルカイダは全く違う組織で、イスラエルの主張も分かりますがガザ地区やパレスチナにも事情があります。そうした現地の実態に即した解説をしてくださる「内藤正典」先生の解説が個人的には非常に興味深かったのでご紹介していこうと思います。
現代イスラム地域研究が専門の内藤正典同志社大学教授
ビジネス系チャンネルのPivotチャンネルに出演されていた内藤正典教授の今回の解説が非常に丁寧で分かりやすくて中立で個人的には今回の紛争の理由や今後の展開が今までよりかなり理解できた動画がこちら。
現地のメディアを現地の言葉で理解して情報を取り、パレスチナやイスラム諸国に行った経験や知見を非常に立体的に解説してくれています。イスラム地域や中東地域の専門である内藤正典教授の視点は、日本で報道されている視点とは大きく異なります。しかも解説するだけではなくフラットに色んな情報を自分で英語で現地の言葉で各人が理解し咀嚼する大切さもずっと訴えていらっしゃっています。島国&無宗教国家の日本に住んでいると分かりにくい、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の複雑な関係性。そこから理解するには、中田敦彦さんの動画が基本として見ておくといいかと思います。
イスラエルとパレスチナの関係が全くわからないという方は、先程の内藤正典教授の解説を聞く前にこちらの中田敦彦さんの解説が丁寧かと思います。中田敦彦さんの解説も個人的にはアメリカ寄り、地上波寄りとかではなく可能な限りフラットに伝えていると感じます。この問題を理解するには実は2000年前の話を理解しないと、紛争が起きている理由がわかりません。ときにはイギリスに翻弄され、世界大戦に翻弄されたこのイスラエルとパレスチナの歴史を振り返っていただけたらと思います。
2本目の動画では、アメリカ・イラン・サウジアラビアなどのイスラエルに関連する国々の思惑を解説してくれて居ます。つまり、イスラエル建国の歴史とパレスチナの関係性を理解してから本当は先程の内藤正典教授の動画を見ると個人的にはよくこの地域の事情を飲み込めるかと思います。
今回の紛争は宗教対立戦争ではない
実は2000年代に入って近代でもイスラエルとガザの関係はじんわりじんわり変化していたのです。どうしても、日本のメディアの報じ方だと911のテロの影響でイスラム過激派=アルカイダ=ウサマ・ビンラディンという印象が強いですし、その後のIS(イスラミックステート)の影響もあり今回の報道もハマスを同様の組織のように扱っている日本のメディアが多く散見されます。
内藤正典教授曰く「アルカイダ、IS(イスラミックステート)とハマスを一緒のテロ組織や団体だと思わないでほしい。全くの別物である」とのこと。こうした視点も詳しく報じない西側、アメリカ、日本のメディアが個人的にも多くあると感じます。
内藤正典教授がお書きになった”分断を乗り越えるためのイスラム入門”にも書かれていますが、アメリカはイスラムの思想が悪だという認識が根底にあると仰っています。20億近くいるであろうイスラム教徒の中で”イスラム過激思想”を持つ人がどれだけ居るのか、という着目点が抜けていると動画でも仰っています。バイデン大統領やイスラエルのネタニヤフ首相の強い言葉のスピーチだけを見ていると”イスラム全体への批判”と捉えてもおかしくないような物言いに見えてきます。
内藤正典教授が動画の中で、こうした紛争が起きると必ず上記のような子供の惨状を中心に偏向報道が始まると。悲劇の主人公を子供にしたがる印象があり、セーフサーチのない国では簡単に乳児や子供の遺体をボカシ無しで報じていてこうしたメディアインパクトもハマス・イスラエル両国のプロパガンダなんだという少し俯瞰した目線が必要だと言っています。
イスラム圏では、女性が肌をあらわにすることを禁じており現地の有名メデイアのアルジャジーラでさえ女性の遺体にはボカシを入れているそうです。(女性の裸を報道するのは屈辱に値するからだと)逆に子供の遺体は相手がいかに残忍な行為に及んでいるかを強烈にメッセージングすることが出来るので多用される傾向にあると、特にイスラム圏の戦争報道においては。
こうしたインパクトのある画像だけを見てハマスが悪でイスラエルが正義だと言うのは違うと僕自身も皆さんにもお伝えしたいと思っています。実はイスラエル軍というのはあのエリアで最強と呼ばれる軍事力を誇っています。おそらく本気を出したら種子島程しかないガザ地区は一週間もかからず制圧できると戦力を保有しています。今回7日に攻撃が開始され2023年10月20日時点で2週間以上経過し、ガザ地区の住民に避難を呼びかけているイスラエル軍ですが軍略以外にアメリカとの関係や紛争後の周辺イスラム圏諸国との関係をかなり意識しながらの戦闘になっていると感じます。本来であれば先制攻撃、奇襲攻撃され自国民を過去最大に殺され感情的にも戦力的にも今すぐガザ地区とハマスを殲滅したいはずのイスラエルですが、戦後の周辺国との軋轢や新たな紛争の火種にならないように攻めあぐねているのが個人的には彼らの本音だと考えています。
今回の問題は決して”宗教の対立ではない”と内藤正典教授は強く訴えます。このあたりの報じ方も日本では弱い気がしています。実態は
・イスラム教徒側はユダヤ教徒を嫌ってはない
・ユダヤ教はイスラム教の先輩の一神教に当たるので一定のリスペクトはある
・もちろん、キリスト教徒を嫌ったりもしていない
という、イスラム教vsユダヤ&キリスト教の構図では絶対にないと。この視点を強烈に解説しているメディアは他には無いので現地赴いてイスラム教、イスラム教徒の研究をずっとされてきた内藤正典教授の言葉には説得力がありました。しかし、
・自分たちの権利や領土を奪うイスラエルという国家に対しての憎悪はある
・イスラム圏の国々の紛争に自国の理論で切り込む主体としてのアメリカへの憎悪もある
という相反する感情があるのも事実なようですが、キリスト教の国だからイスラエルやアメリカが嫌いなのではないという事をちゃんと認識して欲しいと訴えていらっしゃっています。非常に腑に落ちましたし理解できました。書いていて自分も分かりにくくならないようにしているつもりですが、イスラエル・パレスチナの事情が分からなくてもいいので一度こちらの内藤正典教授の動画を見て頂き何かを感じていただけたら自分も嬉しいなと思っております。
本能ブログ編集部としても微力ながらWFP(WFP国連世界食糧計画)を通じて寄付をさせて頂きました。非戦闘員のガザ地区の皆様の無事を祈ってと言う気持ちです。みなさんも僕たちの様に少額でもいいのでパレスチナやガザ地区方々の支援を行っていただけたら嬉しいです。