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ライカM11ユーザーが見た”新型 Leica M EV1”は一体誰向けのカメラなのかを考えてみる

ライカに過去20年で突っ込んできた額は。。。。計算したくない本能ブログさじゃんです。先日噂されていた、レンジファインダーレスEVFオンリーのM型ライカこと、ライカM EV1が正式に発表になりました。

個人的にレンジファインダーこそ、ライカM型のアイデンティティと思っていたので、大胆に消してしまったのは問題だと思っていますが今回は海外を中心とした様々なレビューを分析考察していこうと思っています。

1. レンジファインダー廃止への評価と伝統派ユーザーの反応

Leica M EV1はレンジファインダー(RF)を廃止し、電子ビューファインダー(EVF)を初めて統合したM型カメラです。基本的な仕様はM11に近く、60MPフルサイズセンサーや内部メモリ64GBを搭載しつつ、伝統的な光学RF窓を排し0.76倍・576万ドットのOLED EVFを組み込んだ点が最大の特徴です。

この「レンジファインダーのないM型」という大胆な変更に対し、海外のレビューサイトやユーザーからは賛否入り混じった反応が起きています。

まず肯定的な指摘として、EVF化による実用上のメリットがあります。従来の光学ファインダーでは正確なフレーミングが難しかった超広角レンズ(21mmや24mm)でも、EVFなら視野そのままに構図を確認でき、90mm以上の望遠でも大きくはっきりとピント合わせが可能になります。またEVFではフォーカスピーキングや拡大表示によるMF支援が使えるため、開放F値の明るいレンズでもレンジファインダーより精確にピント合わせできる利点があるとされています。

実際、DPReviewは「従来のMでは困難だった超広角や望遠での構図確認、超高速レンズでのフォーカス精度向上といった面でEVFは有利だ」と評価しています。こうした実用上のメリットから、「EVF版M」はレンジファインダーでは対応しづらい撮影領域を拡張するとの見方もあります。

しかし圧倒的に多かったのは伝統的なMユーザーからの戸惑いと批判でした。とりわけ「レンジファインダーこそMの真髄」

と考える往年のファンにとって、RFを外したM EV1はアイデンティティの喪失に映ったようです。

「レンジファインダーを除いた瞬間、ライカMは単なる高価なだけで機能が欠けたカメラに過ぎなくなった」

と辛辣に指摘しています。光学ファインダー(レンジファインダー)はMシステムの魅力そのものだった。それがシステム存続の足枷ではなく、存在理由そのものだった。
とも述べ、RFを捨てたM EV1にはMたるゆえんが無いと断じています。DPReviewのレビューでも、筆者のRichard Butler氏がレンジファインダーでの撮影体験を絶賛したうえで「残念ながらM EV1にはその体験が一切ない」と述べています。彼は初めてレンジファインダー機(フィルムM型)を使った際、多少ピントが甘くても重ね像を合わせる行為自体に魅了された経験を語り、「写真に本気な人は一度週末にレンジファインダーカメラを借りて使ってみるべきだ」という持論を持つほどですが、M EV1にはそうしたレンジファインダー特有の愉しさが皆無だと嘆いています。要するに

「EVF化で便利になっても、肝心のレンジファインダーならではの楽しみを奪ってしまっては本末転倒」

というわけです。

海外ユーザーフォーラムでも「M型からレンジファインダーを取るなんて冒涜だ」「それでは世界で一番高価なソニーA7Cだ」といった辛辣な声が上がりました。R「Mシリーズが高価なのはレンジファインダー機構のせいという言い訳はもう通用しないな」と皮肉るコメントも見られ、RFを外してなお約9000ドルという価格への不満が噴出しています。伝統派ユーザーの憤慨は大きく、「多くの酷評は実用性云々より感情的な拒絶反応だ。レンジファインダー廃止に侮辱されたと感じているだけだろう」と指摘する向きもありました。実際、RFFではM EV1発売はM型への冒涜か?*といった趣旨のスレッドが立ち、「レンジファインダーパッチを合わせるあの瞬間こそMの醍醐味。それを味わえないEV1なんて理解不能」という声や、「赤窓(重ね像)を除いたら、それはもはやMではない」という原理主義的な意見も散見されました。総じて、「M EV1はレンジファインダーという魂を抜かれた抜け殻ではないか」という懐疑的な見方が伝統的ファン層では支配的だったといえます。

2. M11ユーザーから見たM EV1:Visoflexで十分ではないか?

次に、現行M(特にM11)ユーザーの視点からM EV1の必要性がどう評価されているかです。M11は外付けEVFであるVisoflex 2(3.68百万ドット)に対応しており、必要に応じてEVFを装着してライブビュー撮影が可能です。そのため、

「レンジファインダーも使えるM11 + Visoflexがあれば十分では?」

という声が多く聞かれました。事実、一部のユーザーは「自分ならM EV1を買うくらいならM11-D(背面液晶なしモデル)にVisoflex 2を付ける。そちらの方がクラシックで、必要なときだけEVFも使える」とコメントしています。レンジファインダー機としての操作体系と、EVFによる精密なピント合わせの“いいとこ取り”が既存のM + 外付けEVFで実現できる以上、あえてM EV1専用機に飛びつく理由が見当たらないというわけです。

実用面でも、M EV1の統合EVFは一長一短です。メリットとしては前述の通り解像度が高く(Visoflex2の約1.5倍の576万ドット)見やすいことや、ボディ内蔵ゆえに着脱の煩わしさが無い点が挙げられます。また、レンジファインダー機構を省いたことでカメラ重量が約45〜50g軽量化されており、「持った瞬間にその軽さに気づくほどだ」との報告もあります。さらに興味深いのは、EVF一体化により親指グリップ(サムレスト)を併用できるようになった点です。従来、M型でライブビュー撮影をしようとVisoflexを装着すると、ホットシューに差し込むタイプの親指グリップが使えなくなっていました。M EV1では常時EVF内蔵のおかげでグリップを付けっぱなしにでき、「ライブビュー撮影時にも安定したホールドが可能になったのは思わぬ利点」と指摘されています。Red Dot Forumのレビューでも「Visoflex使用時には親指サポートと併用できなかったが、M EV1ならグリップ装着と正確なフレーミングの両立ができる。と、このメリットを評価していました。

一方、デメリットや従来機との差異も無視できません。まずバッテリー寿命です。レンジファインダー+光学ファインダーのみのM11やM11-Pでは公称約700枚(CIPA基準)の撮影可能枚数がありますが、EVF常時稼働のM EV1では237枚程度まで激減しています。約3分の1以下という極端な低下であり、

「光学式のM11-Pが700枚撮れるのにM EV1は237枚とは驚くべき差だ」

と指摘する声もあります。旅行など長時間の撮影では予備バッテリー必須となるでしょう。また、M EV1では軍艦部左肩にあったISO感度ダイヤルが廃止されています(EVFユニットが占有するスペース確保のためと思われる)。

この点はクラシカルな操作感を好むユーザーには不評で、「あのISOダイヤルが無いのは寂しい」と感じる向きもあるようです。ただJonathan Slack氏は「ISOダイヤルは雰囲気は良いが実用上はなくても困らない。オートISOを使うかクイックメニューから設定すれば十分」と擁護しており、評価は分かれるところでしょう。

そして最大の論点は、「内蔵EVF化は本当に必要だったのか?」という根源的な疑問です。M11世代では既にライブビュー撮影が洗練され、Visoflex 2を装着すればEVFも利用可能でした。DPReviewのRichard Butler氏も、M11発売当初は「ライブビューによる柔軟性でレンジファインダーは形骸化するかもしれない」と感じていたそうですが、皮肉にもM EV1を使ってみてその予想は間違いだったと思い知らされたと述懐しています。「現代のミラーレス機でマニュアルフォーカスレンズを使うのは遅く不正確で苛立つ」とさえ言い切り、レンジファインダーや一眼レフのスプリットイメージの方がシンプルかつ直感的で素早い、と個人的な不満を綴っています。

要は「EVFでのマニュアルフォーカスは便利そうでいて意外と煩雑だ」という指摘です。実際、M EV1には最新ミラーレスのような被写体認識による自動拡大機能などは無く、被写界深度が浅い撮影では自分で拡大ポイントを動かす必要があります。Butler氏は「レンジファインダー流に中央でピント合わせして構図をずらす手も使えるが、それではEVFの精度上の利点を捨てるようなものだ」とジレンマを述べています。結局のところ、「マニュアルフォーカスレンズをEVFで覗いてピントピークを見る体験は、ライカだろうとソニーだろうと本質的に同じ」であり、

同じセンサーを積んだソニー機(α7CRなど)+Mアダプターでも似たように撮れる

なら机上のスペック比較ではM EV1に優位性はない、という厳しい見解もあります。Fstoppersも「EVFを覗いて手動でピントリングを回しピーキングで合わせる作業は、$9,000のライカだろうと$3,000のソニーだろうと同じ」であり、むしろソニーα7R VならEVF解像度は約944万ドットとライカを上回り手ブレ補正や連写・動画性能も備えると比較しています。こうした意見からは、

「レンジファインダーを楽しみたいなら従来のMを、EVFで便利に撮りたいなら他社ミラーレスを選ぶ方が合理的ではないか」

というシビアな評価が透けて見えます。

総じて、レンジファインダー撮影を愛してMを使っている層からは「RFがない時点で論外」、一方で**RFにこだわらない層からも「それなら別のミラーレス機で良いのでは?」と思われがちなため、M11ユーザーが敢えてM EV1に飛びつく動機付けは弱いようです。ライカ愛好家の中には「ようやくVisoflexを付けなくて済む」と歓迎する声や、「老眼でRFが辛い自分には有難い」という反応もありますが、それ以上に

「レンジファインダーのないMなんて…」という戸惑いが勝っている印象です。

3. Leicaの多角化戦略に対する海外の論調

Leicaはここ数年、伝統のM型レンジファインダーカメラ以外にも事業を多角化してきました。その例としてQシリーズ(フルサイズ固定レンズ・オートフォーカスカメラ)のヒット、SLシリーズ(ミラーレス一眼)の展開、さらにスマートフォン分野への進出(HuaweiやXiaomiとの協業、※日本限定でLeitz Phoneの発売など)、写真アプリ「Leica FOTOS」の提供(当初は一部機能を有料サブスクリプション化)、高級路線の各種アクセサリー展開(自社ブランドのフィルターやストラップ、ケース、最近では自社デザインの時計の発売など)があります。これらの戦略に対する海外の評価・論調も様々です。

肯定的な見方としては、「Leicaが生き残るために必然の多角化」という声があります。事実、Leicaの業績はレンジファインダー一辺倒だった頃から大きく向上しており、CEOのMatthias Harschによれば2008年に1億ユーロだった売上が現在は4億ユーロ超に伸びたといいます。彼は「伝統とブランドイメージをデジタル世界と巧みに融合させた」結果だと述べており、その裏にはM型以外のQやSL、コンパニオンデバイスとしてのスマホ連携強化など戦略転換があったと示唆しています。

実際、2015年に登場したLeica Q(28mmF1.7レンズ固定式)は予想を超える大成功を収めました。「Leica自身も驚くほど」で、価格よりもカメラ自体の完成度が評価され、普段はライカに見向きしない層の支持を獲得したのです。

Qは「フルサイズ固定レンズ機という市場で唯一無二の存在」であり、競合不在も追い風となって新規ユーザーを大量にライカ陣営に引き込んだと分析されています。Macfilosのレポートでも「Qシリーズには、普段ライカを検討しないような写真家までも惹きつける何かがある」と述べられています。Leicaはこの成功に勇気づけられ、Q2・Q3と着実にモデルチェンジを重ね機能強化しており、「初代Qのヒットはライカにとって現実的な路線を模索する良い転機となった」という評価もあります。

またスマートフォンへの接近も特徴的です。Huaweiの高級スマホにカメラ技術を提供した戦略的パートナーシップ(2016〜2021年頃)は有名で、Harsch CEOは「4年間のHuaweiとの協業で非常に多くを学んだ。それを今後のクラシックカメラ開発に活かせる」と述べています。彼は2019年時点で「スマホは写真の未来にとって極めて重要」と明言し、

「将来は従来型レンズにも複数センサーを組み合わせてAIで最適化するようになるかもしれない。もはやプロでなくても簡単に良い写真が撮れる時代だ」

と語っています。さらに「手本はApple社だ。ハードだけでなくソフト・クラウドサービスまでデバイスを中心にエコシステムを築いている」とも発言しており、Leicaもカメラとモバイルアプリ、クラウドサービスを連携させた囲い込み戦略を目指していることが伺えます。

実際、その一環として2018年にはLeica FOTOSというスマホアプリをリリースし、カメラとスマホの連携(画像転送やリモート操作、SNS共有など)を図りました。当初FOTOSは一部高度機能を「FOTOS PRO」サブスクリプション(月額/年額課金)で提供しましたが、これにはユーザーから「高価なカメラを買わせておいてアプリ機能に追加課金とは不愉快だ」と反発の声が上がりました。海外掲示板でもReally Leica... This is just offensive and unclassy as hell(本当にライカかよ…品が無いにも程がある)」と怒りの投稿がなされるなど批判が強まり、Leicaは2020年にFOTOS 2.2アップデートでPro機能のサブスクを廃止し全機能を無料開放しています。インドメディアの記事も「ライカユーザーはカメラ本体に高額を払っているのだから、追加料金なしの公正な扱いを望む。当然の反発を受けてライカはプロ版課金をやめたのだろう」と伝えており、ブランドイメージと顧客体験を損ねる施策は軌道修正せざるを得なかったようです。

さらにLeicaは多彩なアクセサリー類やライフスタイル商品にも注力しています。例えばカメラ用レンズフィルターもLeicaブランドでUVa IIやPLフィルターを展開していますが、その価格設定は他社製の数倍に及びます。この点について、あるRFFユーザーは「最新のLeica銘フィルターは質は良いが結局中身はMarumi製だった。高価なだけのブランド料だ」と辛辣に語っています。

また近年ではLeicaロゴをあしらった高級時計(Leitz腕時計)や、オーディオブランドと組んだヘッドホン、スマホ向けの偏光フィルターまで「赤いロゴが付けば何でもプレミアム化」する展開に、冷ややかな視線を送るファンもいます。MacfilosはQ3向けアクセサリー群について「誘惑は大きいが、値段もそれ相応に高いので要注意」と表現し、換算約3万円のサムレスト(親指グリップ)やレンズフードなど驚くほど高価なオプションに触れています。

実際、Q3用の真鍮製レトロフードやサムサポートは各£200(約3万6千円)という価格で、「こんなものまで欲しくなる自分が怖い…しかし値札を見よ」と半ば呆れた調子です。著者は「案の定£200のフードもすぐeBayで1/20の価格のコピー品が出回るだろう」と皮肉っており、Leicaのブティック戦略(限定カラーのケースや真鍮パーツなどで所有欲を煽る手法)を「Boutique Bertie(ブティック好きの物好き)への迎合か、それとも我々もすっかり毒されてしまったのか?」と読者に問いかけています。

こうした多角化に対し、海外では二極化した評価が見られます。一方では「Leicaはマニアックなニーズに応えてくれる」と肯定的に捉える意見があります。Redditでは「ライカは顧客基盤をよく理解していて、“なんでもこなせるカメラ”ではなく我々が本当に求めるものをピンポイントで提供してくれる。どんな製品も万人向けである必要はない」という擁護の声がありました。実際、他社が手を出しにくいモノクロ専用機(M Monochrom)や背面液晶なし機(M-D, M10-D)を製品化し続けているのはLeicaくらいで、「そうしたエッジケース(少数派)な顧客にきっちり応える姿勢は評価できる。私はDシリーズ(画面無しM)ファンだが、そういうニッチを大事にしてくれるのは嬉しい」とのコメントもあります。要するに、大量生産・大量販売よりも特定層に刺さる尖った製品を出すことこそライカの戦略であり、それがブランドの存在意義だという見解です。

しかし他方では、「近年のLeicaは結局ブランド料を載せた高級おもちゃを量産しているだけではないか」という辛辣な見方も根強いです。Fstoppersの記事コメントには

「スペック比較など時間の無駄。ライカはジュエリーだ。皆それを機能ではなく宝飾品として買っているのさ」

という声もあり、3人が賛同しています。これには別のコメントで「『ライカ=アクセサリー』とは的を射た表現だ」と同調する反応もあり、機能性よりステータス性で売っているという批判が見て取れます。また中古市場の崩壊を懸念する声もあります。Leicaが近年、販売不振のモデルに大幅ディスカウントを行ったり(記事中ではSLやモノクローム機に対する突然の値下げに触れています、毎年のように限定カラーモデルを乱発することに対し、「高値で買った先行ユーザーほど損をする状況はブランドの信用を傷つける」という苦言もMacfilosに寄せられていました。総じて、Leicaの多角化戦略は「ニッチ層へのフォーカス」という称賛と「ラグジュアリーブランド化への揶揄」が表裏一体となって語られている印象です。

4. M EV1のコンセプトへの疑問:M11-Dよりも不明瞭?

最後に、「M EV1はM11-D(画面レス機)以上にコンセプトが分かりにくい」という指摘と、それに関連する批判・マーケティング上の意味づけについてです。M11-Dは2025年現在まだ発売されていませんが、Leicaのプレスリリースで存在が示唆されている「背面モニターを持たないM11」で、過去のM10-DやM-D (Typ262)の後継と考えられます。この系統は「あえて不便さ(フィルムライクな操作)を楽しむ」という明確なコンセプトがあり、一部のフィルム世代ユーザーには好評でした。一方、M EV1は便利にするために敢えて伝統を捨てたモデルですが、その狙いが見えにくいとの声が多いのです。

海外レビューでは軒並み、M EV1の立ち位置に戸惑うコメントが見られました。DPReviewは総評として「数日使ってみたが、これを選ぶ理由が見当たらない」とバッサリ。Richard Butler氏は「M9で撮り始めて数分で『これがレンジファインダーを買う理由か』と理解できた。しかしM EV1を数日使っても『これを買う理由』が思いつかなかった」とまで述べています。Fstoppersも「M EV1は戦略的なプロダクトとして失敗だ」と断じ、その理由を「M型を特別たらしめていたもの(レンジファインダー)を犠牲にしたのに、その犠牲を正当化するようなアドバンテージを何一つ得ていない」点に求めています。「これではMシステムの将来は過去ほど魅力的ではなくなる」とまで言及し、Leicaが築いてきた伝統という“堀”を自ら埋めてしまったと辛辣です。レンジファインダーを外したM EV1は、結局AFも動画も無い中途半端な高額カメラでしかなく、同価格帯の他社機に完敗するスペック勝負の土俵に自ら上がってしまったという指摘は痛烈です。

ユーザーフォーラムでもM EV1への疑問は尽きません。あるRメンバーは「これはQ3にMマウントを付けただけでAFも無い中途半端品だ。マーケティングの連中は正気か?」と手厳しく、「EVF全盛の時代にオートフォーカスも無いだなんて、よく思いついたものだ」と嘲っています。さらに「Wetzlar(ライカ本社)は何を考えてるのか全く分からない。こんなもの急ごしらえする暇があるなら、もっと真っ当なカメラ(例:Hasselblad X2D IIキラー)を作るべきだ」とまで言い放っています。Redditのr/Leicaでも発売当日に複数のスレッドが立ち、

「誰向けの何のための製品なのかピンとこない」

という反応が多数を占めました。

「レンジファインダーが嫌いな人は最初からLeicaを買わないし、Leicaが好きな人はレンジファインダーを嫌わない。どっちつかずで訴求先が不明だ」

という趣旨です。また別のユーザーは「ライカは高齢でRFのピント合わせが困難になったユーザー向けにこれを出したのだろうが、だからといってピントピークとズームだけでは不十分だ。もっと近代的で優れたフォーカス支援を実装すべきだった」と指摘しています。彼は20年前の一眼レフ(キヤノン5Dなど)でさえMF時に合焦確認のインジケーターが出るのに、最新ミラーレスでそうした工夫が無いのは怠慢だと批判しています。

まとめ;個人的にはレンジファインダー搭載のM11-Pが良い

 

ではLeica側のマーケティング意図は何だったのでしょうか。一部には「レンジファインダーを楽しみたいけれど視力的に辛くなってきた従来ユーザー」を救済する目的があったという見方があります。実際、海外ユーザーの中には「自分は43歳で乱視がひどく、RFの二重像が辛い。EVF内蔵のMを待っていた」という声や、「体は老いてもライカMを使い続けたい人には朗報だ」という肯定的意見もあります。「Leicaは年老いたユーザー達がM型で苦労しているのを見て、それに応えたのだ。あらゆることをこなすカメラではなく、“我々が必要とするもの”をピンポイントで出してくれるのがこのブランドの良いところだ」と擁護するコメントもありました。レンジファインダーに固執せずともライカレンズの描写や質感を楽しみたい層、たとえば他社ミラーレスにMレンズを付けているような人々に「だったら最初からLeicaボディでどうぞ」とアピールする狙いもあったのかもしれません。

事実、あるRedditユーザーは「ミラーレスでMレンズを使っている層が、より小型軽量な本家ボディで同じことをできる」点に注目し、「問題は価格だけだ。Q3ならレンズ込みでこれより安い」としつつも「お金があれば欲しい」という肯定的な反応を示していました。また超広角専用機や望遠専用機としては魅力を感じるという声もあり、RFFでは「21mmを付けっぱなしで使いたい。しかし価格が…」というコメントも見られました。

しかし、そうしたニッチな需要に応えるにしても完成度が中途半端だと指摘する意見は強いです。「Leicaは確かに高齢ユーザーに配慮したのかもしれないが、肝心の製品がイノベーションに欠ける」という声がそれです。
ではRedditユーザーが「狙った顧客層に対し尻切れトンボな製品だ。価格に見合うだけの真新しさが無いどころか、唯一の“革新”はライカの利益率だったように思える」と手厳しく批判しています。彼は続けて「$10,000も出す客がいるのだから、もう少し価値ある製品にできただろうに。現代のマニュアルフォーカス対応はただEVFを付ければ解決ではなく、富士やニコンのように工夫が必要だ」と述べ、Leicaはその努力を怠ったと結論付けています。Fstoppersの記事でも、LeicaがM EV1によって自らスペック勝負の土俵に降りてきてしまった点を嘆いていました。

「ライカは自らの“塹壕”を破壊してしまった。$9,000払えばソニーやキヤノンのEVF越しにそれを見る羽目になる(それほど競合他社のEVF機の方が安く高性能だ)」

と皮肉りつつ、ブランドロイヤリティで売れる分はあるだろうが新規顧客層拡大には繋がらない失策だろうと分析しています。

総括すると、M EV1はマーケティング的に見ても非常に評価が割れている製品です。レンジファインダーを捨てた大胆さを評価し「Mシステムの新たな柱になるかもしれない」という期待を寄せる声も一部にはありますが、多くは「レンジファインダー機でもなく、ハイスペックなミラーレスでもない中途半端さ」に戸惑っています。「これはあくまでM型ラインの派生モデル第1号(EV1)に過ぎず、レンジファインダーMは今後も継続される」というLeica幹部の発言も伝えられていますが、ファンの間では

「もしこれがM型の未来だとしたら、過去ほどの魅力は無くなってしまうだろう」
との懸念が広がっています。Leica自身も公式発表で「光学RF機に加えてEVF機がMシステムに新メンバーとして加わった」とし、レンジファインダーが無くなるわけではないと強調していました。この点、Leicaとしても伝統派ユーザーの反発は織り込み済みで、今後はレンジファインダーMとEVF Mを並行展開する戦略とも読み取れます。しかしそれは裏を返せば、M EV1単独ではMシステム全体を牽引する存在にはなり得ないということかもしれません。少なくとも現時点の海外レビュー・ユーザー評価を見る限り、M EV1は従来ファンには不評で、新規顧客にも訴求力が弱いという苦しい船出となっており、その位置づけや意義が明確に定まるまでには時間がかかりそうです。

[2025年11月3日追記]写りについてM11-Pで作例を出しています

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