Netflixオリジナルコンテンツは日本、海外問わず優秀な作品が多い中個人的には明らかに異質な「ARASHI’s Diary Voyage」。アイドルのドキュメンタリーとなると普通はステージの楽屋の楽しいようすやプライベートショット等の明るいポジティブな内容がほとんどだが、その先入観は序盤で覆されることになる。
嵐の活動休止への苦悩.アイドルを続ける苦悩が描かれている
嵐といえばSMAPの凌ぐ国民的ジャニーズの大スターであることに異論はないと思う。5人それぞれが素晴らしい才能を持ちそれぞれの特性を生かした活躍を長年続けてきた。そんな折、リーダー大野くんの苦悩からくる「2020年活動休止」が発表される。この決定に至るまでのプロセスや苦悩が地上波では見られないぼぼ「ありのままの姿の嵐」がNetflixでは見られるのである。これは、色んな意味での革命だと思っていてこういうアイドルの裏側を取材させるジャニーズの決断もすごいと思うしここに切り込んでいったNetflixもすごいと思う。
明るいドキュメンタリーじゃないことは、冒頭の大野くんやこちらの桜井くんの表情からもうかがい知れると思う。嵐は比較的メディアに露出しているキャラクターとドキュメンタリーで見せるキャラクターの乖離が少ない素直な人間性の人たちで構成されたグループなんだと思った。不仲な噂も聞かなければ、不仲な様子を見せることもあまりない。そんな順調そうなグループがここまでの思いや決断を「この年齢だから迫られる選択」として伝わってくるのが切ない。ファンのことお客さんのことを考えてここまで走ってきて、さて40歳を迎えるにあたりアイドルとはどうあるべきかということを以前書かせていただいた中居くんの退所のときのような焦燥感がフラッシュバックしたのは言うまでもない。
もちろん、活動休止以外の楽しそうな嵐の表情も満載なのでファンの方も素直に楽しめる内容ではある。しかしかなりリアルな「ジャニーズの忖度」あまり感じないここまでのドキュメンタリーは「各所に忖度しない、する必要ないNetflix」だから出来た新しい試みとしての一面もあると思う。人によって見え方が違うARASHI’s Diary Voyage。嵐ファンの方もそうでない方も1,2話ぐらいまではぜひ見て頂けたらと。
安室奈美恵とHuluが定番化させた引退ビジネス
そう、この引退(活動休止)に向けてネット配信企業がタッグを組んだのは今回が初めてではない。そう安室奈美恵のケースである。彼女の引退までの見事な経済活動は本人の意図したことなのかそうではないのか分からないことも多いが多岐にわたっていた印象がある。引退ツアー、引退ツアーDVD、引退グッズ販売、そしてNetflixと双璧をなすHuluによるドキュメンタリーであった。このドキュメンタリー見たさに安室奈美恵ファンたちは当時Huluへ加入したと言われている。
個人的思うのがネット配信番組だとドキュメンタリーにおいても制約が少ないのだと思う、制作側も演者側も。その条件ならということでテレビであれば脚色されがちなアーティストの素の部分もある程度ありのまま出せるので双方にとってメリットがあるのだと思う。
この引退クロスプラットフォームビジネスは今年は嵐に引き継がれていくことは既定路線だった、そうこのコロナ禍になるまでは。今年開催されるオリンピックのキャラクターも務め盤石の引退イヤーになるはずだった。この難局を嵐やジャニーズ事務所はどのように修正していくのか個人的には興味深い。ここまで国民に愛され陛下の前で歌えるアイドルなどそうはいない、とても稀有な存在の嵐。ぜひ彼らにとって納得できる結末が迎えられるよう陰ながら応援したいと思っている。