医療従事者である自分が職業的知見も交えながら新型コロナウイルス収束後の世界とはどのようなものなのか考えてみたい。
そもそも収束とは?
今はただただウイルスの驚異に怯えてウイルスに振り回されている人類だが、今後は特効薬ができるかびまん性(じわっと蔓延する)に世界中にインフルエンザのように受け入れらていく事が「収束」と考える。ある日突然感染者が居なくなり死者が居なくなり「収束」なんてことは言えないはずである。なぜなら、ピークアウト戦略をとった時点で爆発的感染を防げても患者総数が変わるわけではないのでダラダラと感染者が増えていく状況を作ってしまったのにほかならない。
爆発的感染を防いだ代わりに収束の期間は延びる
というトレードオフなのである。これは、政府の政策を非難しているのではなく統計学的、疫学的な事実である。特効薬が出来るまで早くても1年、現存する抗ウイルス薬が奏効するとわかれば1から新薬を作るよりは早いがそれでも本年末ぐらいなると思う。簡単に考えると重症化する患者さん以外は無症状に感染している人も含めて
インフルエンザのように市民生活に共存して行く存在
になっているというのが自分の予想である。明確な収束が見えない以上、年中マスクになるであろうしイベントの開催も来年まではかなり少なくなっていくと予想される。首都東京もとうとう封鎖する可能性に言及するターンに入ってきた。なぜこのタイミングなのか。都も厚労省も「感染経路が追えない」ケースが多くなってきたということに原因があると思う。検査数が少ないとか無症状の感染者も当然居ると思うが、ここまで急に表立って危機感を行政が煽るのには理由があるはずなのだ。もっとシンプルに言うなら
ここ2、3ヶ月で収束するような感染症ではない
ということを皆様今一度再確認していただけたらと思う。
直撃する文化事業
そうなってくると、存続の危機に陥るのが文化事業、文化産業である。演劇、コンサート、ライブ、格闘技興行、スポーツイベント等々。丸々一年自粛しないまでも、今までと同じだけの人間を集客するというのは至難の技になっていくと思う。つまり、コロナによってもたらされた傷は後々まで残り続けジワジワと文化事業を蝕んでいく可能性がある。どういうことかと言うと
コロナや感染症に敏感に反応する人々がそういったイベントに行かなくなる
のである。
上記のシルクドソレイユが団員の97%を解雇したのは記憶に新しい。公演の再開の見込みがないことと、休園中のキャストのサラリーが経営を圧迫するとの判断なのである。会社自体が潰れてしまえば、再演の見込みはないがキャストのためにも存続のためやむを得ない判断だったと思う。
しかし、こうした例は新型コロナウイルスの感染が拡大すればするほど言い方を悪くしてしまえば「不要不急の」文化事業からダメージを受けていくのは火を見るより明らかであり、オリンピック延期も結局は同じことなのである。不要不急に今年開催する意味がないのである、スポーツに。国や行政や民間でも良いのだが、後回しにされがちな文化事業を救済する意識を強く持って頂きたいし、新型コロナウイルス去ったあと文化事業がそこに存在しない世界というのは生き意味を見いだせなくなる人もいるであろうし、復興、復帰、回復のアイコンとして必ず必要になる仕事であり、カルチャーであり、人材であると考える。
after COVID-19の世界とは
リアリティが無いのなら、報道しなくなりく新型コロナウイルスがインフルエンザのように日常に共存する存在になってしまったのなら、人々は以前と同じ暮らしに戻るのではないか?と想像する方も居ると思う。本当にそうだろうか?
マスクは常に家庭に備蓄される存在となり、
アルコール消毒も常備される世界になる
人々はパーソナルスペースを広く取るようになり
働き方も変わりテレワークが中心となる
消費行動はEC,デリバリーがメインとなる
不要不急の文化事業の「見せ方」も変化する
ということが個人的には想像される。これがいわゆる「爪痕」であり、国やWHOが「終息宣言」を出そうが外出を解禁しようが
人々の心に残ったネガティブインパクトはそう簡単に消えない
のである。人それぞれ新型コロナウイルスの捉え方は違うと思うが、新型コロナウイルス以前の世界と全く同じ経済活動、消費行動に戻ることなどありえないと断言できる。なぜなら、同時多発的に世界中がウイルスに感染し全世界で同時多発的に経済活動がストップしたことなどこの100年ほぼないのだから。
言い方が残酷かもしれないが、史上初の事態の真っ只中に居ると人は俯瞰して現状を認識できなかったりする。東日本大震災のときの自分がそうだった、県外の人、関東の人に
「津波大丈夫?」
「原発大丈夫?」
と心配いただいても真っ只中に居るとリアリティに欠ける感覚になる。報道も見てたりするのだが、なにか違う国の出来事のように感じる。今の日本人も自粛疲れで勝手に終息したような気になっている人が多いように思う。もちろん、マスコミみたいに過度に煽るのはいかがなものとかと思うが、まだまだコロナショックの真っ只中に居ることをまだこれから感染拡大するリスクが多いということを自戒を込めて認識するターンにあるように思う。今までは映画の中の「パンデミック状態」と想像されていた事態が現実に起きているということを日本人はもう少し捉えていく必要性を感じてならない。
東京都の今週末の外出自粛要請を重く受け止め、関東全域で東京への流入を自粛するよう要請するタイミングがオリンピック延期決定後という意味深な感じもしなくはないが、ここは素直に従った行動することが日本において感染拡大を防ぐ一手になると信じるほかない。X JAPANのYoshikiも今までとは違う世界と表現している。
必ず、新型コロナウイルスは収束する。それは現在の医療水準においては確実に達成されると考える。しかしそれまでの道のりは人類が体験したことのない険しい道になる可能性も秘めている。
新型コロナウイルス「後」の世界も想像しつつ目の前の見えない敵と戦わなくてはならないと自戒を込めて書かせていただく。