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映画『ひゃくえむ。』原作ファンはどう見た?【魚豊】

魚豊の連載デビュー作『ひゃくえむ。』が、2025年9月、岩井澤健治監督による劇場アニメとなり公開されました。主人公であるトガシと小宮が、"100m"という“たった約10秒”に人生を賭けていく物語。2024年から2025年にかけて放送された地上波アニメ「チ。」(原作:魚豊)の人気もあって、こちらの「ひゃくえむ。」も非常に話題となりました。日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞も受賞し、作品としての評価も非常に高い「ひゃくえむ。」ですが、意外にも原作ファンにとっては賛否両論に分かれる作品となりました。原作と映画版、果たしてその違いは何だったのでしょうか?

ひゃくえむ。


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『ひゃくえむ。』の物語は、「100m走」という一瞬に全てを懸ける陸上競技の世界で繰り広げられる物語。生まれつき足が速く小学生時代から天才ランナーとして注目を浴びていたトガシと、辛い現実から逃れるため闇雲に走り続けていた転校生の小宮。トガシが小宮に速く走るコツを教えたことをきっかけに小宮は記録更新にのめり込み、次第に二人はライバルであり親友ともいえる関係へと成長していきます。

中学、高校、社会人と、"100m"という一瞬の煌めきを追い求める二人を中心に、青春のすべてを僅か10秒余りの距離に懸ける熱狂と、走ることに取り憑かれた者たちの情熱と狂気の物語り、それが「ひゃくえむ。」です。

物語の背景には、日本の高校陸上から企業の陸上チームまで、陸上競技界のリアルな世界観が広がっていて、登場人物たちはそれぞれ「走る理由」を抱えており、勝敗や記録だけでなく人生観や葛藤がストーリーの軸になっています。100m走の勝負は一瞬ですが、その一瞬に至るまでの努力、重圧、そして走る意味を問い続ける姿が、生き様と重ね合わせて描かれる点が本作の大きな魅力なのです。

映画版の見どころと魅力

「ひゃくえむ。」はスポーツ映画でありながら映像表現や演出面でも独特の魅力があります。まず特筆すべきなのが岩井澤健治監督の映像演出でしょう。監督の前作「音楽」同様に、人物の動きに実写映像をトレースするロトスコープ技法を多用することで、動きのリアリティを高め、水彩画調の背景美術と合わせることで心理描写までも巧みに表現しています 。

レースシーンでは、手持ちカメラのような揺れを取り入れた躍動感溢れるカメラワークやリズミカルな編集により、観客にまるで走っているかのような疾走感と緊張感を伝えます 。

声の出演陣も本作の大きな魅力です。主人公トガシ役の松坂桃李と小宮役の染谷将太は、ともに声の出演は珍しい実力派俳優ですが、等身大の高校生からプロランナーまでキャラクターの成長を見事に演じ分けています。そして「チ。」ファンにとって何より嬉しかったのが「チ。」のノヴァク役としてお馴染みの津田健次郎(ベテランランナー・海棠役)の出演。しかも映画はその津田健次郎演じる海棠のモノローグからスタートするわけですが、これにはいきなり心を鷲掴みにされてしまいました。もはや魚豊作品には欠かすことのできない存在と言っても過言ではない津田健次郎の声を聞くことができるだけでも、魚豊ファンにとってはこの映画を見る価値があるのではないでしょうか。

本作は単なるスポ根ものに留まらず、人生哲学的なテーマが織り込まれている点も大きな魅力となっています。観る人それぞれの立場によって心に響くセリフが違うのも本作の面白いポイントで、熱血スポ根物の爽快感と人生の機微に迫る哲学性、その両方を味わえるのが『ひゃくえむ。』の魅力なのです。

原作漫画と映画版との違い

まず大前提として、映画化するにあたりそもそも原作5巻分を106分に収めるのはやはり無理があるのかなと。ただしその点を加味した上でも、個人的には残念だった点が幾つか見受けられます。第一に映画版が全体的に淡々とした印象を受けてしまったということ。今作に限ったことではないが、魚豊作品は感情の起伏による抑揚のあるドラマチックな展開が特徴です。確かに魚豊作品の雰囲気をアニメーションで再現するのは難しいことではあると思います。しかし地上波で製作された「チ。」では、それを見事に表現できていたので、今作「ひゃくえむ。」でもそれは決して不可能ではなかったはず、と個人的には素人ながらに思ってしまいます。

それとやはり主人公トガシの高校時代のエピソードやキャラが大幅にカットされている部分にも違和感を感じました。天才スプリンターだったトガシの才能が劣化していく様や、挫折から復活へシフトしていくフェーズが全くと言っていいほど描かれていないので、劇中でトガシが再び走ることへの意志を取り戻しても、観ていてその気持ちに乗っかることができませんでした。

原作ファンは観るべきなのか?

といった様に原作ファンからすると納得のいかない部分は多々あるものの、アニメ映画単体として見るとまた評価は変わってくるのかなぁとも思います。前述の通り、映画版には映画版ならではの魅力も詰まっていますので、この「ひゃくえむ。」に関しましては"原作をそのまま映像化しました"ではなく、“映画として成立させるために組み替えた「ひゃくえむ。」”、ここを許せるかどうかが、評価の分岐点になるのではないかと思いました。

この点を受け入れることができない原作ファンは、やはり少なからず"物足りなさ"は感じてしまうかと思います。しかし何度も繰り返しますが、映画版自体は非常に素晴らしい作品ですので、原作ファンであれば、観終わった後にどんな感想を持ったとしてもとりあえずは必見ですし、原作未読の人は映画版からでも「ひゃくえむ。」の世界に興味を持って貰えたらと思います。みなさんはどのような感想を持たれましたか?