何事も食わず嫌いはしません、トモGPです。自分は食べ物も音楽も映画もドラマも、少しでも気になったらまずは1回試してみるタイプです。もちろん自分に合わない場合もありますが、まさかこんなにハマるとは!といった経験も数多くあります。今回紹介するNetflixオリジナル作品「マスター・オブ・ゼロ」もそんな作品です。
マスター・オブ・ゼロ(Master of None)
主人公デフと、その両親や仲間たちとの日常を描いたNetflixのオリジナルドラマです。と説明をするとたったの1行で終わってしまうのですが、このドラマがとにかく面白くテーマも非常に奥深いのです。2015年にシーズン1が放送されてから2021年5月に公開されたシーズン3まで、全3シーズン製作されています。シーズン1と2は1話30分の全10話、シーズン3は全5話からなります。日本では知らない人の方が多いと思われるこの作品、実はアメリカではゴールデングローブ賞からプライムタイム・エミー賞まで数多くのノミネートや受賞歴を持つとんでもない人気ドラマなのです。全シーズンを通してのテーマやキャスティング、設定等の変更はありませんが、シーズン1,2,3とそれぞれ微妙にテイストは異なりますので、今回はシーズン1にフォーカスを当てていきたいと思います。
アジズ・アンサリ(Aziz Ansari)
アジズ・アンサリ(Aziz Ansari)インド系二世のアメリカ人でこのドラマの主演でもあり、脚本から監督といったように(他に共同制作者あり)本作の製作にも大きく関わっている人物です。これもまた日本では知らない人の方が多いと思われますが(もちろん自分も含めて)彼の本職はスタンドアップコメディアンです。それもとんでもなく人気の。いったいどれ程の人気かと言いますと、
彼のワンマンショーで、なんとあのマディソンスクウェアガーデンが満席になるほどなのです。もちろんチケットは一瞬で完売、彼のショーは”チケットをとることが不可能”とまで言われています。
このマディソンスクウェアガーデンでのショーの模様もNetflixの方で視聴可能なので、もしドラマを見て興味を持たれたらこちらの方もオススメしたいと思います。あの大ホールをマイク1本で満席にしかつ、ドッカンドッカン笑いをとる姿にはもはや”すごい”以外の感想は出てきません。
そんな超人気スタンドアップコメディアンであるアジズ・アンサリの笑いのテーマは、ズバリ「社会問題」、そして今回オススメしたいドラマであるこの「マスター・オブ・ゼロ」のテーマもまた同じく、今我々世界が抱えている「社会問題」なのです。
マスター・オブ・ゼロ 登場人物
デフ:アジズ・アンサリ
インド系二世のアメリカ人、CMをメインとした役者だがいまいちパッとせず、映画の仕事もあまり上手くはいかない。独身で30代を迎え両親のことや結婚問題、そして人種差別問題などあらゆる社会問題に直面しながらも日々前向きに生活を送るこの物語の主人公です。作中での姿はもはやいつものスタンドアップコメディアンとしてののアジズ・アンサリそのままと言っても過言ではないように思えます。彼が日頃ステージで行っているパフォーマンスそのままのような雰囲気の主人公です。
アーノルド:エリック・ウェアハイム
デフの親友で長身白人の大男、食べることが大好きな自称モテ男。
ブライアン:ケルヴィン・ユー
台湾系の二世でインド系二世のデフとは境遇が似ている。
デニース:リナ・ウェイス
デフの幼馴染でレズビアン、シーズン1ではこの4人を中心としたエピソードも多く、作中でよく見られる4人のテンポの良い会話も本作の魅力の一つかと思います。
レイチェル:ノエル・ウェルズ
レイチェルはデフの彼女で、デフと彼女との関係もストーリーの軸の1つだったりします。
ここまでの登場人物達をみてみても人種であったり境遇であったりよくある海外ドラマとは少しテイストが異なっているのかなぁと感じます。そして初めにも説明したようにこのドラマのテーマが我々が日々直面する”社会問題”です。
結婚・移民・人種差別や女性差別・LGBT・不倫・高齢化社会・宗教と、各話毎にありとあらゆる社会問題をテーマとして取り上げています。とこの様に字面だけをみてしまうと何とも硬そうな内容なのかな?思いがちですが、テーマは重くてもドラマ自体はあくまで”コメディ”、しかも世界No.1スタンドアップコメディアンといっても過言ではないアジズ・アンサリが手がけているのだから面白くないわけがないのです。
どのエピソードも実に興味深く、アジズ自身がインド系の二世として経験してきた”人種”や”宗教”といった我々日本人ではそこまで馴染みの無いような問題から、逆に”結婚”や”高齢化社会”といったような我々の身近にある問題まで、1話30分という短い時間の中に非常にスタイリッシュにかつ時にふざけつつ、各エピソード毎にテーマを設けてストーリーは進行します。問題定義をするだけではなく、登場人物達のその問題に対する向き合い方を決して重くなり過ぎず極上のエンターテインメントに昇華させるアジズ・アンサリのクリエイターとしての能力は計り知れないものがあります。
2000年代の初頭から活動を初め、今に至るまで順風満帆なキャリアのように見えるアジズ・アンサリですが、そんな彼も過去にスキャンダルによりアメリカに居られなくなった経験があります。しかもその時の彼が滞在先に選んだのが東京で、なんと当時下北沢のライブハウスでライブを行っていたというから驚きです。彼自身も自身の起こした問題に真正面から向き合い、反省をし這い上がった経験を持ちます。実はそうして完成したのがつい先日公開されたシーズン3なのです。シーズン3は1,2とは少しテイストが異なり、もちろん登場人物や設定に変わりはありませんが、ストーリーはデフの幼馴染でレズビアンのデニースを中心に進行していきます。というか主人公はデニースです。自分もまだシーズン3は未視聴で、アジズが色々な経験を経て製作したシーズン3が、一体どのような感じになっているのか非常に楽しみにしているところです。
アジズ・アンサリの基本的なスタンスでもある、”重くなりがちな社会問題をとてもライトな笑いに置き換える”といった極上のエンターテインメントをたっぷりと堪能することが出来る本作。1話30分とちょっとした空き時間にサクッと見ることが出来るという、現代の忙しいライフスタイルにも非常に合った良作です。見終わったあとの満足感と見識の広がりを実感することが出来る、非常に有意義な30分間をお約束します。今からでも全然遅くはありません、「マスター・オブ・ゼロ」みなさんもぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。