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”私はフリーハグが嫌い”が素晴らしい【アイムヒアプロジェクト】【渡辺篤】

生きやすさ、生きにくさってなんなんでしょう?さじゃんです。皆さんは周りに社会や学校に馴染めなくて不登校だったり引きこもりの方はいらっしゃいますか?今回ご紹介するのは現代美術家である渡辺篤さんが取り組んでいるアートプロジェクトである「アイムヒア」プロジェクトです。

「アイムヒア プロジェクト」はひきこもりをはじめとする孤立を感じる人々の声や当事者事情を自身も過去にひきこもり経験のある現代美術家 渡辺篤が当事者と協働する形で社会に向け発信しアートが社会に直接的な作用をもたらす可能性を模索するアートプロジェクト(アイムヒア公式HP)

2018年度には、ひきこもり当事者たち自らが撮影した部屋写真を募集。集まった約160枚を編集し、写真集「I'm here project」を出版。また、インスタレーション作品として、横浜・ベルギーで展示された。国内外のマスコミや美術・福祉・医療関係者、さらには当事者やそれを支える家族らからも多くの注目が集まった。(アイムヒア公式HP)

今回自分がこのプロジェクトを知ったのはたまたま訪れた新国立美術館で行われた展示がきっかけでした。

残念ながら開催は昨年末で終わってしまったのですが、個人的に非常に感銘を受けて興味深いプロジェクト、作品だったので一人でも多くの皆様にご紹介して微力ながら知って頂けたらと考え今回筆を取りました。

ここにいない誰かの存在を示すインスタレーションの数々

展示は国立新美術館のパブリックスペースで行われていました。無料のエリアでしたが、構造物として扉が沢山並んでいるのですがそのどれもが存在感があって立ち止まる人は多かったような気がします。

《私はフリーハグが嫌い》2023年

2021年、渡辺は新型コロナのパンデミックが収束した後の社会、すなわちスキンシップが再開する世界における孤立、孤独問題についても考察し、「私はフリーハグが嫌い」のプロジェクトを始めました。フリーハグとは、2000年代後半以降渋谷などで流行し、街頭で「FREE HUG」と書かれたサインを掲げる者とその呼びかけに応じた者がハグをする行為です。渡辺はこのフリーハグを他者と容易につながることのできる象徴的なアクションと考えます。そして、目の前にいる人にのみ意識を向けがちな既存の社会包摂のあり方を批評的に捉え、インターネットで募集したひきこもりの人々と対話を重ね、直接対面し、ハグを行う活動を続けています。渡辺自身、過去に一定期間誰の目にも触れずに生きていた元ひきこもり当事者であり、自身の経験をもとにし、かつ当事者への尊重を踏まえた活動プロセスも含めて作品化することにより、目に見えるものにしか意識を向けづらい社会への批判と想像の及ばない向こう側にも他者が生きていることを訴えています。

《私はフリーハグが嫌い》は、この現在進行形のプロジェクトから副次的に生まれた造形作品です。それは、渡辺とひきこもり当事者たちとの活動を記録したアーカイヴとも言えます。今回渡辺は、プロジェクト参加者と対面を行ってきた活動のうち、8名とのエピソードとハグの様子の写真をライトボックスに収めました。そして、木製のドアの裏にそのライトボックスを組み合わせています。この8点の立体物は、国立新美術館1階の企画展示室前に置かれ、モニュメントのように立ち現れます。作品の構造とそれが置かれる場、そして作品の見え方それぞれが、遠くにいる誰かに対してどのように想像を働かせるかという問いへとつながっています。日没後から作品が色彩豊かに発光します。(新国立美術館公式HPより)

自分が訪れたときは昼間でしたので扉の裏側はモノクロで撮影された参加者と渡辺さんの写真がメインでしたがHPを見ると夜はこの様に幻想的に発光するようです。一つ一つの扉のコメントには、

なぜ引きこもりになったか

現在の心境や感情

今起こしているアクション

などがアーカイブとして書かれています。実際に渡辺氏が引きこもり当事者に会いに行ってヒアリングをしてハグをする。この流れに大きな意味があるのかと言えば無いのかもしれませんが、自分のように医療関係者でもない限り”引きこもり当事者”に実際に接する機会など現代でなかなかないように思います。

しかし問題提起というか、自分がたくさんの引きこもりの方々のエピソードを読んで感じたことが

生きにくさを抱えて生きている人が自分の想像を超えて居ることを知らせたい

というメッセージが渡辺さんから発せられているような気がしました。引きこもりといってもきっかけは様々で、親からの虐待、友達からのいじめ、地域からの隔絶などなど自分が体験したことのない苦悩だったり苦労がたくさん散りばめられていて衝撃を受けました。

渡辺さんが2018年から取り組んでいる「アイムヒアプロジェクト」は、引きこもり当事者や孤立感を感じている人と連動して作品を制作することを目的としております。こうして、沢山の方に社会と上手に繋がれない人々へスポットライトを浴びせることで自分もなにかアクションが変わるかもと思っています。

こうした社会起業家的なプロジェクトには興味がありますし、これからもアイムヒアプロジェクトの行方を追ってみたいとも思いました。仮にこの記事を読んでくださっている読者の方々が引きこもり当事者や引きこもり経験が無いと仮定したとき、最初の一歩は渡辺さんが示してくれているような

こうした社会と繋がれない方が居る

と認知するだけでも、様々な視点や見方が変わるような気がします。私はフリーハグが嫌い!というセンセーショナルなタイトルではありますが内容は社会的弱者に寄り添おうとする渡辺篤(アイムヒアプロジェクト)という素晴らしい美術家の優しさが伝わる素晴らしいソーシャルな展示だったと思います。

www.iamhere-project.org